act19 お昼休み(前)
「志麻さん、昼一緒せぇへん?」
「えっ、うん、全然良いけど私こそいいの?」
俺から誘ったんやし、勿論、と忍足は笑った。
あの盛大な授業サボりのとき長いこと話していたこともあってか、優子と忍足はよく話すようになっていた。忍足がラブロマンス系統の映画が好きと聞いたときは意外性が高すぎて優子は驚いたが、それからと言うもの忍足にお勧めの映画を聞いてはレンタルショップで借りるということが多くなった。
昼食に誘われ、特に断る理由もないので二つ返事で優子は了承の返答をしてから理沙と瑞香に゙今日は忍足くんとご飯食べるね゙とメールを送って鞄から弁当の袋を取り出す。
「事後報告で悪いんやけど岳人も一緒にええ?」
「もちろん!」
そう言いながら机をがたがたと動かしていると教室のドアが勢い良くあいて「侑士、めしー!」と言いながら岳人が入ってくる。
忍足はそれに軽く返事をしてから座った。
「あれ、今日は志麻も一緒なのか?」
「ごめんね、お邪魔してます向日くん」
「どうせ侑士が誘ったんだろ、別にいい!」
「おー、向日くん男らしいね」
「岳人でいーぜ」
「ほんと?私も名前でいいよ。…じゃあがっくんって呼ぼっかな」
「何だそれ」
弁当を広げながら楽しそうに会話を続ける二人を見て忍足は笑った。
「マジか」
優子からきたメールを読んで瑞香は短く呟いた。
優子が忍足と昼食を食べるのは何ら構わないのだが、昼休みに突入してから知らせるのはどうかと思う。ううんとケータイとにらめっこをしながら唸っていると、ジローがひょいと瑞香の前に顔を覗かせる。
「あれー、瑞香がまだ教室にいんのめずらC」
「なんか優子が忍足?と弁当食べるからってメールきてさぁ」
「マジマジ?じゃあ一緒に食お!」
「マジで、入れてくれんの?」
「おー!いいっしょ宍戸ー!」
「はぁ?」
今こちらに向かってきたばかりの宍戸はジローの言った意味が分からないようで疑問をぶつけるように返事をしたが、ジローが短く説明するとすんなりと了解の返答をした。
やったーと言いながら机を動かすジローに瑞香は思わず笑った。理沙に自分も今日は教室で食べると簡単にメールを打ってから瑞香は椅子を引いた。
「お前らいっつも二人で食べてんの?」
「別にいつもって訳じゃねーよ」
「でも大体宍戸は一緒だよー。学食んときとか、他の奴がいるときとかも」
「分かった、ジローの世話係りだろ」
「よく分かったな」
そう言ってけらけらと笑う二人にジローは「何だよ、失礼な奴らだなー」と言いながら、ジロー自身も笑っていた。
C組トリオはいつだってマイペースである。
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