act16 テニスの異変





「おい!宍戸」

「あ?何だ跡部かよ」

「アホ女は居るか」

「桜庭?いねー、ついでにジローも」

「チッ、またかよ」



2限目が終わった後の十分休みで跡部はC組へと足を運んだ。瑞香が居ないと知ると何かを確信したような不満そうな顔をしてから舌打ちをした。

理沙と優子がマネージャーになって数日二人はよく働いていた。理沙が妨害することも多々あるのだが仕事のスムーズな行きように二人を勧誘した跡部本人も驚いたほどだ。
その点は嬉しい誤算として跡部は受け取った訳だが、彼女たちにも欠点がある。



「こうも授業をサボられたら生徒会長として俺様も黙ってはいられねえ」



マネージャーになる代わりとして部室、屋内コートを自由に使っていいと言ったあの日から少なくとも理沙はほぼ毎日一時間は授業をサボるようになっていた。同じクラスの、しかも席が前後の跡部が言うのだから間違いはない。
その跡部が宍戸に聞いてみたところ瑞香もその調子らしい。真面目な優子は分からないが、二人が同時にサボっているのは間違いないだろう。



「…宍戸、着いてこい」

「は?授業どうすんだよ」

「一時間くらい良いだろうが」



あーん?という跡部に宍戸は不機嫌そうな表情を作りながらも結局一緒に行くことになった。お人好しである。














「くっそー、くやC!」



ジローはそう言いながらも顔は満面の笑みで、優子は思わず微笑んだ。
普段は授業をサボることなどしない優子だが、今日はジローが来るからと理沙にほぼ無理矢理にして連れて来られてしまった。しかし結果楽しくテニスをしてしまっているので優子もこれで完璧に共犯者となったのだ。



「ジロー、理沙に負けてるくらいじゃ俺にはぜっっったい勝てねーぞ!」

「マジ?!」

「ちょっ、瑞香!それじゃ理沙が弱いみたいじゃん!」



ぷんすかと怒る理沙に瑞香は笑いながら一人サーブ練習をした。
三人、…もとい二人、理沙と瑞香がここのコートを使っていて気付いたことは、この世界ではテニスであり得ない技がかませるということだった。

テニスコートの鍵を貰った翌日に早速理沙は瑞香を連れて意気揚々と授業をサボりながらテニスをしたのだが、理沙が思いきり打ったボールを瑞香が返そうとした時瑞香のラケットが吹っ飛んだあの瞬間の驚きといったらない。もともと理沙は力が強かったが、瑞香のラケット、というより人がラケットを手から離してしまうほどの力は持っていない。
というか、普通は、ないはずだ。


まずそこからテニスの異変に気付き、瑞香がちょっとボールを捻ってサーブをすれば理沙の顔面目掛けてボールが飛んできたりした。(理沙は死ぬかと思ったと言っていた)勿論元の世界でもボールを回転させて跳ねたあと軌道が変わる打ち方もあるが、ここまでのものは出来ないはずなのだ。

おかしい、と二人は自分の腕を見ながら思った。
出た結論はそれはこの世界特有のもの、という簡単なもので済ませたが実際はもっとディープな問題なのだとは思う。でもこれがこちらでの普通なのであれば、それに慣れておかねばならない。そのことを二人は優子に伝え、普通になろう、とまた一つ約束を増やした。


とりあえず、この世界での普通を目指すのが目標だ。







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