高校デビューを目指し友達を作るべく意気揚々と高校に入学したのだけれど、それは見事に失敗してしまった。
高校デビュー、と言っても別にいじめられていたとか今までずっと一人だったとか見た目が地味だったとかそういうことではない。別に見た目はおそらく普通だ思うし友達はいた。移動教室をするのにも困ったことはないし、お昼や休み時間も同様。しかし、それが毎年変わるのだ。クラス替えするごとにそのポジションは変わり、一年たつと去年仲良くしていた子とは、すれ違えば話すもののわざわざ休日に遊びにいったりだなんてことはなかった。案の定中学を卒業してからも、クラスの集まり以外ではあうことはなかった。
つまりだ、何を言いたいのかというと私は友達が欲しいのだ。一生の付き合いとも言えるような関係を望んでいる。はい、重いとか言わない。大学からでも遅くないとも思うけれども、高校から欲しい。私の欲である。が、新しくクラスに入り友達は出来た。出来たけれど、私が望んでいたような友人は出来なかった。何日か一緒にいれば段々慣れてきて色々話すようになれたけれど、どの子も一歩入って話すことは出来そうになかった。一度グループが決まれば他には移動しづらいし(女の子とは面倒なものである)そもそも他の女の子たちを見てもそこまで仲良くなれそうな気はしなかった。イコール、結局私の人生を変えることはできなかったのである。なんだかため息をついてしまう、友達を作る次の新しい機会まであと三年。先が暗くて、入学早々ブルーだった。代わりといってはなんだけれど少し憧れの女の子なら出来た、けれども、まぁ話しかける勇気もなく。一年の間で合同授業の席替えで側の席になれと念じるくらいしかできない。

特に入りたい部活もなく、美術部にとりあえず入部し幽霊部員となった。美術部に入った子の大体がゆるゆるとした性格で私と同じく幽霊部員として入部している子が多くとても楽である。折角高校生になったことだしアルバイトでもしようか…と、いうことで、コーヒーショップのスターボックスで求人紙をパラパラと眺める。とくにやりたいものはないのだけれど。頬杖をつきながら次のページへとめくれば、正面の席の椅子ががたりと引かれた音がして、ふと顔をあげた瞬間私は顔を歪めた。


「バイトなんか出来るんスか、あんた」
「…なんでいるの、涼太」


いやに目に入る金髪が私の目の前に座る。わたしの嫌いな幼なじみ、黄瀬涼太。周りの女の子たちがこそこそと涼太の話をしているのがわかる。それをとくに気にした様子もなくアイスコーヒーを飲む涼太がなんだか相変わらずで最高に苛ついた。


「部活は?」
「今日は自主練、俺はこのあと撮影」
「早くスタジオいきなよ」


バスケ部のエースで、モデル。女の子にもてるし多分まぁ友達もいるだろう。毎日忙しく過ごしている涼太、まさしくリア充。昔から要領良くてなんでも出来た涼太が羨ましくて、でも私はとくに特技なんてなくて、いつも負けたような気分になって悔しかった。多分幼い頃から私は涼太を妬んでた。それでも幼少期はまだ仲が良かったけれど、小学校の高学年あたりから涼太のそれが目立ち始めて、周りの目も変わっていって。私は涼太の側に居るのが嫌になって離れた。私が涼太に勝てるものなんて成績ぐらいだったのでそれだけは涼太に負けないようこっそり頑張ってはいるけれど、なんて惨めな闘争心だろうかと自分で呆れてしまう。


「部活、入んないんスか」
「入ってるじゃない、美術部」
「活動はしてないだろ」


いや、そうだけれど。何故そんなことを涼太に言われなければならないのか。私だって青春まがいなことしたいのだけれど、そう出来るほど世の中うまいこと運ばない。涼太みたいに何か得意なものを一つでも持っていれば違ったのかな。そんな仮定の中でしか考えられない自分が嫌だった。求人紙を鞄にしまって空になったカップを片手に立ち上がる。


「涼太には関係ないでしょ」


それだけ言って私は店を出た。涼太が不機嫌そうな目をしていたのが見える、それでいいのかモデル。でも多分不機嫌なのが周りには分からないだろうからいいのか。イケメンって得だ、笑っていなくても物思いに耽っているとでも思われるのだから。涼太の視線の意味は知らんぷりして、私はそのまま家路についた。私はいつだって涼太を羨んでばかりだ。意気地無しな自分を見て見ぬふりで、今日も毎日を過ごしている。








「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -