「紗雪っ」
「おー由依、おはよ」



テンポの良い大阪弁が飛び交う中二つの標準語、それは私と紗雪の会話。
秋と言えどまだ少し暑い日差しを浴びながら私は紗雪の隣の席に座った。小学校六年生のとき大坂に引っ越してきた私、自分一人だけしゃべり方が違うというのが嫌じゃないとは言えないけど、この地を嫌いになれるとは言えなかった。友達も出来て、慣れていくうちに大坂の魅力はどんどん増える。


あっという間に一年が過ぎ中学生になったとき、途中転入してきたのが紗雪だった。
同じくクラスで席も近い、何より標準語同士で、紗雪と私は色んなことで気が合ったので仲良くなったのはすぐだった。

そしてまた時はたって今は中三。ほんの少し大人びた私と紗雪、去年は離れてしまったけど今年はまた同じクラス。
偶然行きたい高校も同じで、一緒受かろうと勉学に励む受験生だ。



「夏休み明けのテストどうだった?あたし化学マジ駄目だったんだけど…無理、死んだ」
「私数学が…うん、ちょっと…」
「文系だからしょうがないよね」
「うん」



先日返ってきたテストの話ではぁとため息をついた。朝から少しへこんだ。
紗雪がはいと渡してくれた飴を口に入れてなめる。おいしい。



「あ、千歳くん」
「千歳だ。おはよ」
「おお、二人とも早か」
「いや千歳がギリギリなだけだよね。てか今日は来たんだ」



後ろから椅子を引く音がして振り返れば紗雪の後ろの席に千歳くんが座っていた。相変わらず大きいなと思う、こんな中学生居るのかな。
出席率が異様に悪い千歳くんが学校に来ていることのほうが紗雪は不思議だったみたいで、机につっぷしている千歳くんの頬に指を刺したりしている。



「そうだ、今日ね、転校生来るんだって」
「この時期にぃ?可哀想、評定出んの」
「どうだろ、でも2組だって」



紗雪は千歳くんに飽きたのか、ふーんとだけ言って頬杖をついて飴を食べた。
私も昔転入してきた立場だから少し気になるんだけど、紗雪は大して興味がないみたいだった。うん、紗雪も相変わらずだるだるだ。



「ね、後で見に行こうよ」
「ええー……」



こうやってダルそうに言うけど、結局紗雪は着いてきてくれるのを私は知ってる。
それににっこり笑ってから、チャイムと同時に入ってくる先生を合図に立ち上がった。





(女の子かな?)
(さぁ)















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