03 偶然、必然?








「謙也、起きぃ。朝礼終わったで」
「んぁー」



何だかインパクトの強い転入生が登場した朝礼が終わり授業前の休み時間。机に突っ伏していた謙也を起こしに行くと、案外すんなりと起きた謙也は辺りを目を細めて眺める。
寝起きだからか、普段の明るい感じとは大分違う雰囲気に感じる。まぁ数秒あればそれも直るが。

転校生が来るらしいと前日に急に噂が流れた。噂好きの女子は勿論のことだが、それが女子生徒というのが流れ出したときは女子以上に男子が沸いていたかもしれない。俺も謙也もそこまで興味がわく訳ではなかった。変な時期に転校してくるものだ、とその程度だ。今日になって更に俺たちのクラスに来るらしいと知り、身近な奴等は騒ぎ立てた。
謙也は同じクラスなら尚更いつ話しかけても一緒やん、と言い寝不足からか朝休みから朝礼全てぶっ通しでおやすみなさいだ。しかし想像以上に愉快な転校生に、流石の俺でも興味がわいた。



「何やおもろい子が入って来たで」
「ほー、白石が言うんは珍しいな」



机に肘をついてから謙也はニヤリと笑ってからそう言った。確かに俺がそう言うことは珍しいかもしれない。




「けーんやぁ。あ、白石だ」
「何や、紗雪と由依」
「謙也くんに白石くん、おはよ」
「おん、おはようさん二人とも」



と、廊下側の窓が開き謙也の名前が呼ばれる。二人して振り向けば、見慣れた女子二人がそこに寄りかかって呼んでいた。
真中は謙也と軽音部で一緒、由依は新聞部で俺と一緒で、時々一緒に仕事をしたりしている。真中は去年同じクラスで知り合いだ。何ともいえない関係だが、所々共通点があるからか何だかんだでよく会う。



「転校生、どんな感じ?」
「なん、それ見に来たんか?」
「だって由依が行こって言うからさー…」
「ほんまお前はなんというか」
「うっさい謙也」
「あはは」



由依に甘い、という言葉をあえて言わずに真中のほうを見た謙也に遠慮なくデコピンをくらわす彼女に由依がおかしそうに笑った。相変わらずだ。
転校生と言えば、まるで漫画のように女子生徒に机を囲まれわいわいと質問攻めに合っていた。どうやら関東の有名なところに通っていたらしく、皆それに興味があるらしい。

今日は見れそうにないで、と二人に声をかけようとした途端後方、…転校生のいる所からがたんと勢いよく椅子を引く音と叫び声。




「あああああ!!」




視線の先はこちらに来ている。しかし俺は喋った覚えはない。何だろう、そのまま視線を追えば自分より奥。
真中と由依は転校生のせいでか注目を集められていることにいま気付いたのか、柵にかけていた体重を少し軽くして前を見た。たっぷり三秒ほど時間がたった頃、真中が目を見開く。



「……千鶴?」
「うっそ、うそ!マジで!紗雪?!」



対照的なテンションで紡がれたお互いの名前に、俺たちは首を傾げて視線を二人に送るしかなかった。











「あたしが引っ越す前のとこでさ、塾が一緒だったんだよね」



いやぁ、ビックリしたわ。弁当を食べながら言う真中にこちらがぽかんとしてしまった。
あのあと休み時間がなくなってしまい二人の関係を深く聞くことは出来ず、授業と授業の間の休み時間も転校生の相田千鶴には人だかりがあり話せそうになかったので昼休みに謙也と二人揃って聞きにいけば、真中はあっさりとそう言った。

塾で同じクラスになり、いつも一緒にお弁当を食べていたらしい。小学校卒業手前から二人ともに塾には来なくなり、アドレスを交換してはいなかったので中学になってからはプツンだったそうだ。
叫ばれた瞬間は分からなかったが、なんだか見覚えがあると思い凝視したところ気付いたらしい。小学校のとき塾なんて行っただろうかとそんな点にも気がいったが、この偶然に驚くばかりだ。



「なんちゅーか、凄いな」
「でしょ?なのに紗雪相変わらずこんなテンションなの」
「まぁそれが真中のアイデンティティやろ」
「さすが、白石分かってるー。ポッキーあげる」
「おおきに」
「ちょお、俺にもよこせや」
「嫌です。由依に貰ってよ」
「えーっ…えーと……じゃあこのお弁当箱に入ってた草みたいなの…」
「プラスチック!!由依まで何しとんねん!」



ボケたんじゃん、と二人に盛大なツッコミを入れる謙也を見ながら真中は笑う。貰ったポッキーをそのままぱきりと食べる。
久々に食べたそれは、何だか甘かった。





(何故かって、それはまだ秘密)















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