02 はじめまして









「ここが四天宝寺かぁー!」




なにこれ、校門?
大阪にやってきたのは3日前、学校に通うのは今日から。そう、うちは何を隠そう転校生である。
父の都合やら何やらでこんな時期に引っ越すという最悪な事態。頭は悪くないほうだから、まぁ高校は一般で何とかなるだろう。

そんなこんなで今日初日。登校中も大阪弁が飛び交ってなんだか楽しくなってくる。
しかしまぁ制服のなんてダサいこと!デザイン考えたの誰だ!




「で、職員室どこだ」




お寺のような門をくぐってきょろきょろと見渡す。とりあえず正面から入れば事務室みちな場所が見えて、声をかけたらおじさんが職員室まで連れて行ってくれた。
優しい!人情!人情に溢れている気がする!ちょっと大阪という地に固定観念があるからか我ながら色々おかしいとは思うけどこの昂る気持ちは押さえられない。生憎新しい学校に馴染めるかなドキドキみたいな可愛らしい面は持ち合わせていないのだ。


職員室にノックして入れば担任らしきおっさんが出迎えてくれた。
せっかくの転校生だしここはベタに名前を呼んだら入ってくる仕組みにするとか言って、チャイムが鳴ったと同時に先生は立ち上がって行こうかと声をかけてきた。せっかくだしっていう考えがもう素敵すぎる。

何だろうタライとか用意されてるのかな。そしてドアを開けたらドリフのようにうちの頭に落ちてくるのかな。
まさにベタ、もうベっタベタな展開だ。痛そうだけど一度やってみたかったよ、アレ。ふふふと笑ったら気持ち悪いと先生に言われた。先生ったら馬鹿正直なんだから!


大阪人に馬鹿はいけないぞと言われたあたりで教室につく。呼んだら入ってこいよ、という言葉に頷いて廊下の壁に寄りかかる。
それにしても残り半年過ごすか過ごさないかぐらいなのに仲良くしてくれるんだろうか。大阪よ、広い心でうちを受け入れて!



「相田ー、入ってこーい」



考えに浸っているときに中から名前を呼ばれる。
よし、とりあえずいつでも来い、タライ!!

ガラっとドアを開けるとクラス中からの視線、よし今だ来い。降ってこい。
しかし一向にタライは降ってこない。ドアのところでずっと立ち止まるうちに先生がどうしたと言いかけたところで、うちは無性にガッカリして叫んだ。




「タライ、落ちてこねーし!!」




バケツの水とかないの?なっ、ない!ないのか!自分の真上を見上げても仕掛けられているものは何もない。大阪を深読みしすぎた!色々独り言を言ったあと教室は一瞬だけ静まって、すぐにどっと笑いが溢れた。
あれ、案外ツカミは良い感じ?なんだからクラスも暖かい雰囲気だ。よしなんか急に元気二倍くらいになった。



「初めまして、東京から来ました相田千鶴です!ほんの少しの間ですがよろしくお願いします!あっ、今のは別に名字にかけた駄洒落じゃないです」



そう言えばまたクラスの人たちは笑った。
うん、なんだか楽しく過ごせそうだ!









「…またおもろい子が来よったなぁ」



教室の後方でイケメンが小さく呟いたのをうちは知らない。新しい生活は今日始まったばかりだった。













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