07 異常事態発生









「千鶴ー来たよー」
「あっ紗雪!由依ちゃん!」




昼休み、紗雪が由依を引き連れて2組の扉を開けて名前を呼べば千鶴が立ち上がって二人に手を振る。千鶴がここへ来てから数日たち、千鶴もやっとここの空気に慣れ始めてきていた。
昼食は千鶴が頼んで、紗雪と由依と三人で食べるようになっていた。近くの座席を適当にくっつけて三人は座る。



「うわー相変わらずおいしそうな弁当だね、由依」
「え、」
「ほんとだ、ちょーうまそう」
「千鶴、由依て自分で作ってんだよ、これ」
「マジで!すげー!」
「そ、そんなことないよ!紗雪だってお菓子上手じゃん」
「いやーお菓子とおかずは別もんでしょ」
「うちチャーハンなら得意だけど」
「チャーハンだけでしょ」
「ちょ、ひど」
「お、紗雪ー」



三人で談笑しているところに低めの声が入ってきたと思えば、千鶴は紗雪の後ろの人物を見てぎゃあああと叫ぶ。心の中で。
後ろに居たのは紗雪の軽音仲間兼千鶴の思い人である謙也で、鞄片手に話しかけた。



「謙也ぁ。なに?」
「ちょお軽音のほうで聞きたいことあんねんけど」
「えーご飯中ですけど」
「俺も飯食いたいっちゅーねんアホ」
「アホ言うな。…あ、じゃあ一緒食べる?由依も白石と何かあるって言ってたじゃん」
「ほんま?じゃあそうするわ」



白石ー、という謙也の声をバックミュージックにぽんぽんと進んでいく話に千鶴と由依はぽかんとしていた。由依が白石に用事があるのは本当で、まぁ一緒にお弁当を食べるのはいいのだが。
ちらりと千鶴を見ればヤバいヤバいと一人でどうにかなってしまいそうだ。まぁ千鶴が良いなら良いか、と由依はがたがたと机を動かしながら思った。



「ケンヤくんとお昼とかうち嬉しいよ今なら通天閣からバンジー出来る!」
「うおああ相田おったん!!つかそんなにかい!」
「白石くんおはよー」
「邪魔すんで、お二人さん。あ、俺椅子持ってくるから机ええで」
「え、いーの?食べづらくない」
「おお、大丈夫」



紗雪と由依、千鶴と謙也が向かい合わせに座り、紗雪と由依の間に白石が椅子を持ってきて弁当を広げている。謙也は元々紗雪に用があったため勿論紗雪の隣だ。謙也が正面に居るだけ千鶴は幸せだろうと二人が呆れながら千鶴を眺めた。
文武両道ということで二つの部活に入らなければならない訳だが、テニス部の二人は各々新聞部、軽音部に所属していた。らしいと言えばらしいだろう。



「だからー、謙也ここ叩くの早いんだって。だからあたし等いつもずれるんだよ」
「せやけどこんくらい早いほうが聞こえいいんちゃうん」
「ちゃうん。あーもー光居ないかな光、多数決したい」
「お前財前が俺側ついたらどうするん!」
「光は正常な子なので間違いなくあたしと同じ意見です」
「腹立つわーお前!」


「え、もう原稿終わったの?!早い……」
「毒草の方だけやで。記事作るん大変やろ?」
「何か書くものがあれば楽なんだけどねー…テニス部何かニュースない?」
「はは、俺等引退しとるで」
「あ、そうだった!新聞部っていつが引退?」
「文化部は文化祭で引退やろ?…そろそろやなぁ」



謙也と紗雪がけらけらと笑いながら言い合う姿と、白石と由依が引退かぁとしんみりし始める光景を見ながら千鶴は弁当のおかずを口に運ぶ。
聞くところによるとテニス部の三年生は引退済みであるし、文化部も文化祭で引退。そしてその文化祭ももうすぐである。果たして何故自分はこのタイミングで部活に入らされたのだろうか。規則なら仕方ないとは思うが、オサムちゃんに流されて入れられた感は否めない。

まぁそういった細かいことを気にしないのが千鶴であったので、また目の前の謙也たちの会話に耳を傾けた。それと同時に紗雪があ、と呟いて千鶴のほうを見る。白石と千鶴はなんだと紗雪に視線を送る。



「千鶴て部活はいんの?流石にこの時期じゃなしなのかな」
「もう引退の時期やしなぁ」
「でもここって部活凄いやらせたがりだよね」
「ああ、せやな」
「両方は無理だから文化部だけとかありそうじゃない」
「ありうるなぁ」
「で、正解は?」



とんとんと予想が積み上げられているのを聞いていれば矛先が急に自分に向き少し驚きながらも千鶴は答える。直後、四人は固まってから、珍しく声を高く上げたのだった。





「テニス部のマネージャー!」








((((…はぁ?!!))))












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