06 素直なおもい









「財前くん?」




今日は昼休み部活の先生に用事があって職員室に寄って、その帰り。偶然というか、本当にたまたま、音楽室を覗いてみると見慣れた堅そうな黒髪。
一人でギターをいじっている。音楽室に入って声をかければやっぱり彼で、軽く挨拶してくれた。



「ごめんね、邪魔しちゃって…練習?」
「や、適当にはじいてただけっスわ。音楽室になんか?」
「ううん、通りかかっただけ」



財前くんとは直接知り合った訳ではなかった。彼はテニス部であり、軽音部であって、紗雪と謙也くんの後輩であった。クールでかっこいいと一つ学年の違う私たちの学年でも有名な財前くんの名前は私も聞いたことがあって、友達にあれが財前くんと遠巻きから見たときは確かにかっこいいとは思ったけれど、それだけだった。
でもその後、紗雪と謙也くんと財前くんの軽音部仲間と、私と白石くんの新聞部仲間で一緒に帰る機会が増えた。私と紗雪が仲良しだから、白石くんと謙也くんが仲良しだから、そして私以外の三人ともに部活で財前くんを可愛がっていたから、なんて偶然のような必然のような項目が出揃ったからだ。

始めこそ彼はどこか私に素っ気なくて冷たくて(そのたびに紗雪がこらと怒っていたのを今でも覚えてる)、苦手だった。三人が言うには彼は人見知りだから、初めての人には皆こうなんだと慰められた。それは本当だったみたいで、しばらくすると彼は私にも普通に話してくれるようになった。
私も話しは上手い方じゃないけど財前くんはそんな私の話にも付き合ってくれた。廊下ですれ違うときはお互い挨拶するぐらいには仲良くなれた、そんなことが何故だか嬉しくて喜んでいた。それが中2のとき。


そして私が三年生になった頃、財前くんは更にかっこよくなって、よく告白されるようになっていた。それを知った瞬間、なんだか財前くんが急に遠くに行ってしまったような、そんな気がして。どこかショックを受けているような自分に逆に驚いてしまった。





「高橋さん?」
「え、あ、ごめんぼーっとしてた……」
「クラス戻るんスよね、俺も用事あるし行きますわ」
「練習は?まだ昼残ってるしいいよ、」
「練習ちゃいますし、別にええっすわ」



いつの間にしまったのかギターはケースの中に綺麗に仕舞われていて、財前くんは私より一歩ドアに近い位置まで来ていた。
多分彼は練習していたんだろうし、昼休み一杯は練習のためにここに来たんだと思う。きっと用事っていうのも、ないものをあるとしてくれたんだと、何だか感じた。




(…好き、だなぁ)




好きになる理由もいつそうなったのかも自分で分からないほどだけれど、彼が好きなんだって、おもう。










(冷たいようで暖かい彼が、)















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