鼻をつくような薬品の匂い。
誰かが鳴らしてるのか、カチャカチャと響く音。
煩いな…と思いながらゆっくりと重い目蓋を開けると、まず見知らぬ天井が目に入った。
そしてそのまま目線を下ろせば、薬品棚やベッド等の保健室にありがちなものが揃っていた。
え、まさかここ病院…?私入院したっけ…?
身体を起こしてまだ覚醒しきっていない頭でボーッとしていると、私が起きたことに気付いた医者らしき人物が近付いてきた。
「おっ、目を覚ましたんだな!身体に異常はないか?」
…あれ?この人ドクターマリオそっくりじゃね?
数回瞬きし、自らの頬をつねってみたり目を擦ってみたりするがどう見てもドクターマリオだ。幻覚じゃない。
彼は私の謎の行動に不思議そうに首を傾げるが、目を擦っては駄目だと注意したあと書類にペンを走らせだした。
「さっき診察した時は平気そうだったが…とりあえず服を捲って後ろ向いてくれ」
「寝てる間に勝手に診察されてたの私!?言っとくけどお金持ってないわよ払えないわよ!!」
「無料だ無料。ほれ、最終確認するから喚いてないで背中出せ」
「というか、なんでそんな診察とか最終確認とかするの?私別に怪我したりなんかしてないわ」
そもそも何故私が病院に居るのかが謎だ。
病気でもないハズだし、大怪我をしている訳でもない。
なのに何故か病室のベッドで寝ていてしかも診察されていた。
私は必死に起きる前の事を思い出そうとし、そこでゲームしようとしたらゲームが壊れた事を思い出した。
意識を失う程のあの強烈な光は何だったのだろうか…
思い出したと同時に病院に居る理由に納得した。きっとお母さんが私が倒れてるのに驚いて救急車を呼んだのだろう。
「ああ、私、部屋で意識を失って此処に居たのね…思い出した」
「いや、君は爆発に巻き込まれたと聞いているが」
「爆発!?!!!」
爆発なんて物騒な単語にギョッとし、驚きのあまり目を見開きながらドクターマリオ(仮)の方を見る。
彼はコクりと頷いて、「まぁ落ち着け」と私の肩を軽く叩く。
落ち着けるか!!
「3DSが爆発したっていうの?そんなの初めて聞くんですけど。落としたから?ねぇ落としたから?」
「あー…詳しいことは…君を連れてきた本人に聞いた方が良いか。じゃあ私はマスターハンドを呼んでくるから、君は一応安静にしてなさい」
私が詰め寄ると素早くドアの所まで避難し、さっきの台詞を言い残して部屋から出ていくドクターマリオ(仮)。
思ったよりも足早いなあのオッサン…!!
色々と聞きたいことがあったのだが仕方ない。それに先ほど言っていた言葉が気に掛かった。
マスターハンドって…まさかあの巨大な手袋の事か!?!っていうかそれしかなくね!!?
ということは、まさかっ!もしかして!ここってスマブラの世界…?!
あまり使ったことなかったが、確かにドクターマリオも参戦していたハズだ。…え、じゃああのドクターマリオっぽい人も本物?!
「でも一体どうして……」
心当たりは、無くもない。
夢小説でありがちな、ゲームしてたらトリップしちゃった的なアレ。
まさにそのパターンだ。
いやそんな非現実的な!と思う心もあるが、さっき頬をつねったとき普通に痛かったし夢ではないと思う。
というか、そうであって欲しい。
そんなことを考えていると、コンコンとノックの音が聞こえてきた。もう来たのか。
期待と不安でドキドキと胸が高鳴る。
「あー、良かった!目が覚めたんだね!」
ガラガラと開いた扉の先には、あの大きな手袋…もとい、マスターハンドが居た。
気付けばそこは