私、どうやらスマブラの世界に来ちゃったようです。
三次元に存在し得ない動いて喋る巨大な手袋が今、目の前に…そう、あのマスターハンドが目の前に居るのだ…!!
彼(で良いのだろうか?)は大きな手袋なのに慣れた様子であの狭い扉を潜り、私の目の前まで近付いて来てはふよふよと浮かび此方を見つめる。
いや、眼無いけども。
それにしても緊張しているのか、感動しているのか…私はうまく声が出せないでいた。
だってだって、あのマスターハンドが目の前に居るんだよ…!?
どうなってるんだろう!?特に手首のあたりとか!!てか触ってみたい!あとちょっと乗ってみたい!!
「あれ?驚かせちゃったかな?」
「どちらかというと好奇の眼を向けているような…」
マスターハンドに夢中で気付かなかったのか、後ろに居て見えなかったのか……いつの間にか室内に入っていたらしいドクターマリオが横から現れる。
「とりあえず、この手袋がマスターハンドだ。見るからに人じゃないが、無害だから安心してくれ」
「初めまして〜!そうそう!僕は無害な可愛い手袋さんだから!」
「可愛いはちょっと無理があると思います」
「ええ!?酷い!!」
ガーン!とショックを受けたように地に伏せる手袋。おしゃれな手袋ってわけでもないし。
それにしてもなかなかにシュールな光景だ。
しかし立ち直りが早いようで、再び浮かび上がれば何故か私の周りをぐるりと回りだした。
「な、なに?」
「それにしても本当に掠り傷一つ無いね?いやーよかった!転送装置がいきなり爆発したと思ったら君が倒れてたからあの時はもう吃驚しちゃったよ〜」
「え」
何か今、ケラケラと笑いながら軽い口調で凄いことを言われた気がする。
転送装置?…転送装置!?
「爆発って転送装置!?3DSじゃなくて?!えっ…えっ!?どういうこと?!」
「もしかしたら転送装置が壊れた時に、何らかの弾みで別の世界に居た君を引き寄せちゃったのかも。でも原因はまだ分からないんだ、ごめんねー?」
相変わらず軽い口調で謝罪の言葉を発するマスターハンド。
巻き込んでごめんね、という意味合いなのだろうか。というかこの手袋軽すぎないか。
まぁ別の怪我一つ無いから良いのだけれど。
しかし少しすると今度はもじもじと指を動かし始め、何か言いたげにする手袋に私は首を傾げた。
「それとね、本当はすぐにでも君を元の世界に返してあげたいんだけど…時間が掛かりそうなんだ」
「そうなの?」
「うん…」
それはなんとも構わない話だ。
念願のスマブラの世界に来たのにすぐ帰されては死んでも死にきれない。
まだ好きなキャラたちを拝めてないんだからな!あ、もちろんマスターもマリオも好きだよ?
でも折角だから生の剣士たちとか生ピカチュウとかカービィとか見たいんです。
そんな感じで内心安心している私に、マスターハンドは更に嬉しい事を言ってくれた。
「それで、しばらくの間君はお客さんとしてこの屋敷に滞在して貰いたいなって思ってるんだ」
「え!いいの!?」
「勿論!嫌かな?」
「全然嫌じゃないです!あの、宜しくお願いします…!」
嫌がる訳がありません、寧ろナイス!!と心の中でガッツポーズを取る。
マスターハンドも嬉しそうに「うん!宜しくね!」と声を弾ませてくれた。
こうして私はこの屋敷で生活できる事が決定しました。
手袋とご対面