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◆08

いつの間にか私の頭のなかは、あいつでいっぱいで。

小さなことでも、あいつのことが気になってしまったり。

もはや、嫌になってくる。

やきもち 


今日は、グリーンと一緒に勉強する約束をさせられた土曜日。

彼との待ち合わせ時間は昼間だったけれど、私は余裕をもって6時に起床した。

目が覚めて携帯を見ると、メールが1件入っていた。着信時刻は朝の5時、グリーンからのメール。

…5時?

私は違和感を感じながら、メールを開いた。

 おはよ。
 いま帰ったとこでさ
 9時頃に起こして。

え、あ、そっか。昨夜は飲んでたのかな。
でもグリーン、昨日も車で学校来てた。飲んでた訳ではない、のかな…?

私は、胸がきゅうっと苦しくなる感覚に陥る。なんだろう、この嫌な感じ。グリーンが何してたって、私には関係ないじゃない。

私はそんなもやもやした気持ちを抱えながら、シャワーを浴びに行った。

シャワーの後に髪を乾かし、朝食を食べ終わったところで時計をみると、9時ちょっと過ぎ。私はまだもやもやとしていたけれど、グリーンに電話をすべく携帯を手にとった。

「…ん」

6コール目に、やっと彼が電話に出た、眠そうな声。

「9時だよ」

私はグリーンに今の時刻を告げる。

「…ああ」

彼はまだ寝ぼけているようで、思いきって訊いてみるなら今だと、私は自分を奮い立たせた。

「あんな時間まで、何してたの」

どんな答えが返ってくるのか、私はなんとも言えない気持ちで、彼の返事を待つ。

「えー…いろいろ」

ドキドキして待った割に彼の返答は適当で、私は勢い任せに更に踏み込んで訊いてみた。

「なにそれ、いやらしいんだ」

「まぁ、そんな感じ」

彼の返事に、私は息が詰まったような気がした。落ち込んだときのような感覚を味わう。

私は軽く傷付いたような気持ちで、電話を切った。

そしてそんな気持ちから脱け出せないまま、グリーンと向き合っている今に至る。

「なぁナマエ」

「なに」

しばらく黙って私たちは勉強をしていたのだが、グリーンが口を開いた。

「お前、イライラしてる?」

「そんなことない」

自分の素っ気なさ過ぎる返答は、イライラしてることをあまりにも如実に物語っていた。
(…ちょっと情けない)

「言ってみろよ」

グリーンの顔をチラッと見ると、彼は心配そうな表情をしてくれていた。

あんたの一言が
気にくわなかったの

私はそう言ってしまいたかったけれど、言えずに俯く。なんだか、自分が悲しいよ。

私は暫くだんまりを決めこんでいたけれど、悔しくなって、ポツリと言葉を口にした。

「つまみ食いする人、嫌い」

「?」

グリーンは一瞬きょとんとしたけれど、すぐに、納得したという表情に切り替わった。
(やっぱ頭の回転はやいな、なんて思った)

「たぶん勘違いしてるぜ」

オレが朝帰りだったのは、当直のバイトしてたから。

そう言ったグリーンはニヤリと笑う。

私は思わず目を見開いて、彼を見る。

なんだ、良かった

私は心の中にあったもやもやが溶けていくのを感じた。
(しかも私ったら、嬉しさまで感じちゃってる)

しかし、安堵の後には、一気に恥ずかしさが込み上げてきた。

勘違いしていて、しかも妬いてしまって、それで機嫌悪かっただとか、恥ずかし過ぎる…!

そしてその恥ずかしさに言い訳をするかのように、グリーンに対する不満が頭に浮かび上がってきた。

甘いのかと思えば、時に辛い(まぁ結局甘いんだけど)
優しくして、傷付けて、だけど傷の手当てはしてくれる

考えれば考えるほど、私の心はグリーンに振りまわされているよ。

「もう、

 グリーンなんか嫌い」

私はたいして持ち合わせてもいない勇気を振り絞って、いっそグリーンを傷付けてやろうとした。

「わかった、わかった」

だけど、私が本気でグリーンを傷付けたいだなんて思ってないことはお見通しだ、とでも言うように、彼は私の暴言にびくともしなかった。
(これじゃぁ私が更に悔しい思いをしただけじゃん!)

「勘違いして妬いてたくせに」

グリーンはそう言いながら、にやにやと笑っていた。



(あなたは賢い策士さん、やられたり!)


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