dream | ナノ


* * *


数週間後


グリフィンドール対ハッフルパフの試合には、色々な人達が観戦に訪れていた
我がホグワーツの校長、ダンブルドアも教員席の方で顔を覗かせており
そのせいかグラウンドに入場してきたハリーも、緊張が和らいだように見えた

全校生徒が応援に来ているので、観客席も大賑わいだ

「スネイプがあんなに意地悪そうな顔をしたの、見たこと無い」

「あー……そうかも」

流石にダンブルドアが見ている前で、ハリーを苛め抜くような事はないと思ったが
相変わらずハリーには敵意剥き出しの彼には、そんな事すっぽり頭から抜け落ちているかもしれない

隣でピッチ上を見るロンの声に、適当な相槌を打った

「さあ、プレイ・ボールだ……アイタッ!」

「ああ、ごめん。ウィーズリー、気が付かなかったよ」

ロンが小さな悲鳴を上げたかと思うと、その直ぐ後ろから聞きなれた嫌味が聞こえてきた

どうやらドラコがロンの頭を小突いたらしい
ロンは後頭部を摩りながら後ろを確認したが、またすぐに前を向きなおす

「この試合、ポッターはどのくらい箒に乗っていられるかな?誰か、賭けるかい?ウィーズリー、どうだい?」

ドラコはロンに話しかけるが、ロンは答えなかった

丁度試合では、ジョージが審判であるセブルスの方へブラッジャーを打ったという理由で
ハッフルパフにペナルティー・シュートが与えられたところだった

……今日も通常営業なセブルスに、溜息が漏れる

「グリフィンドールの選手がどういう風に選ばれたか知ってるかい?」

ドラコがまた、挑発するような声で話しかけてくるが
相変わらずロンは試合に釘付けになっている、隣のハーマイオニーも、ネビルも
自然とドラコを無視するような状態になっていたので、彼も躍起になって挑発してくる

今度は何の理由も無しに、ハッフルパフにペナルティー・シュートが与えられたところだ

「気の毒な人が選ばれてるんだよ。ポッターは両親がいないし、ウィーズリー一家はお金が無いし……ネビル・ロングボトム、君もチームに入るべきだね。脳みそが無いから」

顔を真っ赤にしたネビルが、我慢できなくなって後ろを振り向く
座ったまま後ろの席のドラコを睨みつけながら、歓声の中でも聞こえるように声を張る

「マルフォイ、ぼ、僕、君が十人束になっても適わないぐらい価値があるんだ」

ネビルはつっかえながらも、この間ハリーに言われた事をそのままドラコへとぶつけた

ドラコとクラッブ、ゴイルは大きな声を上げて笑い始めたが
それを聞いていたロンは、試合に釘付けになりながらも、こちらの話に参加してきた

「そうだ、ネビル、もっと言ってやれよ」

口出しをしたのが面白くなかったのか、ドラコは面白くなさそうな顔をする
ネビルとロンを更に煽る様な言葉を使って、2人へと話しかける

「ロングボトム、もし脳みそが金で出来てるなら、君はウィーズリーより貧乏だよ。つまり生半可な貧乏じゃないって事だな」

「マルフォイ、これ以上一言でも言ってみろ。ただでは……」

ロンは試合を見たまま、後ろを振り返ることはしなかったが
横顔を見ると、今にも堪忍袋の尾が切れてしまいそうだった

「ロン!ハリーが!」

「何?どこ?」

ハーマイオニーがロンを呼ぶ

上空を旋回していたハリーが、物凄い急降下を始めた
―――あの動きは、スニッチを見つけた?

弾丸のように一直線に地上へ向かって突っ込んでいく様に、観衆も息を呑んだ

「運が良いぞ。ウィーズリー、ポッターはきっと地面にお金が落ちているのを見つけたのに違いない!」

それをまたしてもドラコが煽ったので―――ついにロンが切れた

立ち上がったかと思うと、ドラコを組み伏せて馬乗りになり
それを見たネビルも、負けじと立ち上がってロンの助勢に加わった

大乱闘の中、殴りあう音と周りからの悲鳴が響く

「ちょ、っと!こんな所で喧嘩なんて……!」

ロンがドラコの顔面にストレートを決めれば、ネビルだって負けていない
クラッブとゴイルに2対1で健闘、握った手を振り回している

「あー、もう……!」

「行けっ!ハリー!」

真後ろでの騒ぎに気付かず、ハーマイオニーは椅子に飛び乗ってハリーを応援する
私はそのまま席に腰を下ろして、頬杖を付いた

地面の近くまで急降下したハリーは、セブルスのいる位置のギリギリを掠め
そして次の瞬間には、急降下をやめて意気揚々と手を挙げていた

その手には、太陽の光を受けて輝くスニッチが握られている

「スニッチ!」

スタンドの観衆から、ドッと歓声が上がる

―――新記録かもしれない
こんなに早くスニッチを捕まえるなんて、前代未聞だ

「ロン、ロン!何処行ったの?試合終了よ!ハリーが勝った!私達の勝ちよ、グリフィンドールが首位に立ったわ!」

ハーマイオニーが叫ぶ声で、後ろの喧騒がぴたりと止んだ

ボロボロになったロンとネビルがのそのそと起き上がって
ピッチの方を見ようと椅子を乗り越えてやってきた

「ああ、クソ!一番良いところを見てなかった!」

「こんなに早く?凄いやハリー!」

「……ロン、ネビル。鼻血出てるよ」


何故か2人は清々しい笑顔を作って、グラウンドへ降りていった
グリフィンドールの選手達の元へ駆け寄って、祝福する為だ

私もハーマイオニーに連れられ、下へ降りる

他の寮生に肩車されたハリーが、とても良い笑顔で笑っているのが見えた



* * *



「ハリーったら、一体何処に居たのよ?」

試合後、着替えを済ませる為に控え室に向かったと思っていたが
暫く姿を消していた彼は、ユニフォームのまま箒を抱えて戻ってきた

「僕らが勝った!君が勝った!僕らの勝ちだ!」

ロンはハリーの背中をポンポンと叩きながら、彼を称えた
ハリーは試合後と打って変わって、何だか嬉しそうな顔では無かった

「僕はマルフォイの目に青痣を作ってやったし、ネビルなんかクラッブとゴイルにたった一人で立ち向かったんだぜ」

「まだ気を失ってるけど、大丈夫だってマダム・ポンフリーが仰ってたわ」

「スリザリンに目にもの見せてやったぜ!皆談話室で君を待ってるんだ、パーティーをやってるんだよ。フレッドをジョージがケーキやら何やら、キッチンから失敬してきたんだ」

一足先に寮へ戻った生徒と選手達の後を追おうと、ロンが急かす

「それどころじゃない」

ハリーが息も吐かずに、そう言った


「僕らは正しかった、賢者の石だったんだ」


ハリーは試合後に人影を追って、禁じられた森に入った事を話した

セブルス・スネイプが、賢者の石を手に入れたいが為に
その手伝いをさせようと、クィレルを脅していた事
三頭犬を出し抜く方法など、情報を手に入れる為に動いていると

それが彼の推理だった

「賢者の石が安全なのは、クィレルがスネイプに抵抗している間だけどいうことになるわ」

「それじゃ3日と持たないな、石はすぐに無くなっちまうよ」




疑惑は、一気にセブルスに集中する事となる

彼らの注目は、セブルスとクィレル




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疑惑の眼差し

近付く謎


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