dream | ナノ


* * *


結局授業中は、薬を調合しながら開いた口が塞がらなかった
セブルスは露骨な自寮贔屓をしてばかりだし、よくわからない言い分でハリーを減点したりで散々

グリフィンドールの生徒達は、初めての魔法薬学の授業のおかげで
その教科が嫌いになるくらいに、ダメージを受けていた

忌々しげに愚痴と溜息を組み合わせながらも、失ったエネルギーは補給しなければいけない
各々昼食をとる為に、少し早足で大広間へ足を向けるのだった

「スネイプのヤツ、ハリーが嫌いなのかな?」

「あの調子じゃ良い成績は貰えないだろうな」

ハリーとロンは絶賛、セブルスの態度について意見交換中だったが
とりあえず好きになれない人種としてインプットされたようだ

「僕、落第したらどうしよう」

「大丈夫だって、しっかり取り組めば努力に見合う成績をくれるよ」

「はぁ?見ただろうあの態度、僕らに”可”をくれるかどうかさえ」

試験じゃ文字の書き方ひとつで減点されたっておかしくないぞ
ロンはそういってがっくりと肩を落とし、それから私をジト目で見つめた

「あーあ、どこぞの誰かのように頭が賢ければなぁ」

思わず彼から目を逸らすと、隣のハリーと視線がかち合うが
彼は目を大きく開いて、興奮気味に話し始めた

「さっきの、何語なのかと思っちゃったよ!魔法薬学、詳しいんだね」

「本当、どっかの学者みたいな話し方!よくあんな事覚えてられるよな、あれって予習範囲なわけ?」

「あー……でも、ハーマイオニーの方が先に手を上げてた。彼女も予習が大好きみたいだよ」

私は勉強していた時間だけは長かったから、知識の量だけは多い
この短期間にあそこまで学んだハーマイオニーの能力の高さにとにかく驚いた、頭が良すぎる

そんな事を考えていると、2本先の通路からよく目立つ赤い髪が飛び出してきた
ウィーズリー家の名物双子、フレッドとジョージだ

「よぉ、弟よ。スネイプの授業はどうだった?」

「フレッド、ジョージ。勿論最悪だったよ」

両サイドを歩く兄達に、当たり前といった顔でロンは答えた
組み分けの時にもパーシーがセブルスの話をしていたし、兄達から学校の事は色々と聞いていたのだろう

「お嬢がスネイプに噛み付いたって、もうグリフィンドールでも噂になってるぜ」

歩くスピードが、少しだけ落ちる
授業が終わったのはついさっきなのに、噂って

「凄かったぜー、それに関しては気分が良かったよ!」

「あー俺達も見てみたかったよ、スネイプが自分の受け持ちで生徒に負かされるトコ」

「ちょっと、別に噛み付いてなんて」

会話を静止しようと口を挟んでみるも、双子のマシンガントークの前では
私の抗議の声なんてちっとも耳に入っていかなかったらしい

「大人しいと思ってたけど、意外とやるじゃん」

「お噂では魔法薬学に詳しいとかなんとか……なぁ、今度一緒に薬作んない?」

「お断りします、だって悪戯用でしょ?」

「その通り」

悪戯に加担するなんて楽しいかもしれないけど、私は目立たないって決めたのだ
……ほんの数時間前に、早速破ってしまったわけだけど

もう二度と目立たないと心に誓い、改めて前を見る

「振られちまったな、ジョージ」

「やめろよ二人とも、女の子巻き込むなよ」

「ねぇ、悪戯ってどんなことするの?」

”悪戯”

そのワードに興味を示したのは、好奇心旺盛なハリー
ハリーの質問を聞いた双子は、先程とは打って変わって目を輝かせる

「良くぞ聞いてくれた、ハリー!」

「この間ママがトイレを爆発させるな!なんて言ってたけど、今度はその案を頂いて」

「超面白そうだろ?考えただけでワクワクする」

「それって大変な事になるんじゃ」

「そりゃあもう大変な事になるだろうな、なんたって」

既に計画は練られているようだ

一体どんな悪戯をするつもりなのか分からないが
フレッドは楽しそうにニコニコと口角を上げて笑っていた

「おっとそこまで。お嬢には刺激の強すぎる話だ、相棒」

「レディの前でする話じゃ無かったか、失礼」

食欲の失せそうな話題に、思わず厭きれたような表情をした私を見て
フレッドとジョージは、さっさと口を閉じてしまった

「ねぇ、私を”お嬢”とか”レディ”って呼ぶのは……」

「……勘弁してくれ、君を”ダンブルドア”なんて呼べないぜ」

「それとも全力で恭しく致しましょうか、お姫様?」

「それはイヤ、絶対に」

双子に絡まれながら歩を進めると、ようやく大広間へと辿り着いた

ホグワーツの校内は入り組んでいて不可思議な通路が多いので、とにかく移動に時間掛かってしまう
おかげで午前の授業が終わった頃には、お腹もペコペコだ

ローストビーフが盛られた大皿のあたりに着席すると、ハリーやロンも同じ思いだったようで
自分の取り皿へ肉料理と付け合せをとると、さっさと口の中へ放り込んだ

「ああ、午前の疲れが飛んでっちゃうね」

「美味しいね、このローストビーフ」

ロンが肉料理を突っつきながらそう言ったので、ハリーが同意する

この二人、入学してからずっとこの調子で、随分と仲が良い
他の生徒とも勿論会話するけど、行動するのは大抵一緒だ

こうやって少年の友情が育まれていくのを見るのも、微笑ましくて良いものだ

「でも、これ毎日続くんだぜ?少なくとも俺達はこれを2年は食ってて」

「そしてもうとっくに飽きてる」

「嫌いじゃないくせに」

フォークを握ったままの兄二人にロンはそう言って、フォークに刺してあった牛肉を頬張った
フレッドとジョージは苦笑いして、飲み物へと手を伸ばす

「ま、嫌いじゃないけどな」

「変わらず、ずっとこの味だしな」

照れた仕草まで同じなんて、一卵性双生児……恐るべし

「少なくとも、毎日ローストビーフの味で一喜一憂することが無くて良いじゃない」

「そりゃそうだね、良いことだよ」

「皆で食べるごはんも、美味しいしね」


―――仲良く、一緒に食事をとる


今まで機会の少なかった、アットホームな食事は
私にグリフィンドールならではの”暖かさ”を与えてくれるものだった

同級生と机を並べて、切磋琢磨していく

そんなキャンパスライフが続けば、どんなに楽しいのか


ホグワーツの生活は、相変わらずだ


− − − − −

厳しい先生、愉快な仲間、刺激的な物事

全部、キャンパスライフには付き物


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -