ユメノステム




(さよならばいばい、ユニコーン)


 孝士殿から触れて下さることなど、今までありませんでした。
 業務的な其れでなく、あるいは制止故ではなく、言うなれば触れるという行為そのものが目的であるかのような接触です。同じベッドに乗っているからこその何か性的な感覚がして。抱き枕は孝士殿の立てた膝に敷かれてしまって、長らく彼の人の身代わりとなった使命を終えようとしています。して、いると思いたい。首筋に触れる指が一瞬ではないと。夢か夢かと疑って、瞬きすら出来ないのです。

「最近」
「はい」
「……言わなくなったな」
「な、にをですか?」
「俺は言わないよ」

 また、またまたまたまたそうなのです。孝士殿はその卓越した聡明さの使い所を間違えています。お分かりでしょう私が何を考え期待しあなたを寝床で待っているか。あなたの淡々とした動作に、息に、どれほど心を乱されているか。一挙手一投足が凶器になりうることすらも。

「お前の全部は俺のもの、ってお前言ってたけど」
「いっ……今はどうだか分かりません!」
「違うのか?」

 駆け引きが大事なのよ、と世間一般では言われていますけれど。
 引けども引けども今日の孝士殿とは距離が開きません。普段は押せども押せども縮まらない距離が恐ろしいほど接近しています。なぜでしょう、今なら。
 今ならきっと、孝士殿が頷いてくれるような気さえしました。

(求む、渇望する目です)

 全部やる、と孝士殿は呟きました。汗ばんだ身体が密着して、憎らしいことに平生と全く変わらない心音を届けます。

「俺はお前のものになる。……だったらお前の髪は」

 其れに口付けられた時、微細な音がしました。それは恐らく取り寄せられた未来の音なのです。

「肉は、血は、爪は」

 黒髪の奥、ふたつの空洞を覗きました。
 ぶわぁと全身を駆け抜けた熱が巡り、廻り、到達し。

「――俺の、だな」

 それは喜びとなって目から溢れ出しました。






(ユメノステム。すべてはあなたを中心にまわっている)









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9巻まで読みました
孝ももに飢えすぎて死にそう
なんでいろはちゃんとかにはおいしいイベントあるのにもも子には寸止めで終わりなの!孝士のへたれ!もも子にも事故ちゅーでいいからお願いします(^q^)/


title:メテオライトと孤独の法則


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