伝える術を知らなかった





俺の目の前には、無防備な姿で眠る、旭がいる



「…こんなとこで寝てんじゃねーよ。



襲われてぇのかよ、馬鹿」



自分で言ってて、アホらしいと思った
コイツは、土方の彼女 で、俺はただの友達な筈なのに。
そんな事、分かってるのに




きっと、部活で遅い土方を待って、待って、疲れて眠ってるんだろう。



(んだよ…)



むしょうに、イラついた。
旭のそんな優しさを、土方が受けることに
土方に、向いていることに


俺が、旭に興味を持ち始めたのはいつだったか。
そんな事、覚えちゃいねぇ
興味、なんて、最初から無かったのかもしれない。好きだった。きっと、



ソレくらいずっと前から、俺はコイツのこと想ってるのに



3年になって初めて一緒のクラスになった土方と旭は付き合い始めた。



(何で、土方なんだ)



俺の方が、先に旭に出会って


俺の方が、先に旭を好きになった。


なのに、旭は、土方の彼女で




そんな時に、俺の頭の中に浮かんだ考えは、土方からお前を奪う事、だった。
今までも、少しでも気に入る女がいれば、そうしてきた。

それと、同じことだ



旭を、奪えばいい



何度も何度も、無理矢理にでも、手に入れようとした。
だけど、土方と一緒に居るときに見せる旭の笑顔が、何度も何度も俺の邪魔をした。



旭の全てが、俺の邪魔をしたんだ。



「旭……………」



名前を呟きながら、そっと旭の髪に触れてみる。
見た目どおり柔らかくて、滑らかで

土方が疎ましく思うし、妬ましいとも思う



「…好きだ……」



今まで、言おうとしても、言えなかった一言。
たった、これだけの言葉なのに


無駄に、重みを含んでいて
今まで、誰かに"好き"だなんて、言ったことも無い俺には、難しすぎて


今眠っている旭に無理やりキスすれば、旭は、どんな反応をする?
考える必要も無いな


きっと、泣いて 泣いて 




土方の、名前をよんで……



─ズキ、ン



「…馬鹿か…俺ァ」



自傷的な、笑みが自然に漏れた。周りから、遊び人なんて言われてる俺が、こんなにも臆病で弱虫なんて、と。

知らねぇんだ


こんなとき、どうすればいいのかなんて




伝える術を知らなかった

(お前以外、いらないから)
(、だか ら)




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