『ハッピーハロウィーン!』 「うおっ」 夜9時を回る頃、部活から帰宅した黒尾が玄関を開けた先に彼女は立っていた。 黒とオレンジと紫が主体の可愛らしい魔女のコスプレ衣装を身にまとっている黒尾鉄朗の彼女鉄朗その人だ。 絶対領域なるニーソを履き見えるか見えないかギリギリのワンピースを揺らと黒尾の目が無意識にそこへ集中した。 鉄朗はプラスチックで出来た先端に星のついているステッキを彼の鼻先に振りかざしニコニコと笑顔で黒尾を出迎えた。 「で、何してるんですかプリティー魔女さん」 鼻先のステッキを奪い取りコツンと鉄朗の頭を小突くと割と硬かったようで『あだっ』と可愛げのない声が漏れた。 『もう!今日はクロの両親が二泊三日の結婚記念日旅行行くからって不出来な息子を私が任されたんだぞっ』 「ほーう、2人とも居ないと」 『うむ』 「んでコスプレして待ってたと」 『うむ』 「んで泊まってくわけだろ?」 『そうよ!』 胸元で両手を組み仁王立ちする鉄朗を他所にニマニマした笑顔で黒尾は静かに玄関の鍵、チェーンを掛けくるりと彼女の方を向き直した。 「これで鉄朗ちゃんは逃げられない猫に睨まれた鼠になったな」 『そうそう、ねずみに…ん?』 ふと何かおかしいと感じた鉄朗は黒尾を見上げるとたいそう嬉しそうな笑顔を彼女に向けていた。 「お前、誘ってんだろ?欲求不満なわけ?」 完全にスイッチの入った黒尾が靴を脱ぎ彼女に近寄った。 『は?!ちょ、え?』 じりじりと近づくと黒尾の手が鉄朗の腰を捕まえ胸に引き寄せるように腕が絡みつく。 片手で首筋をなぞるとびくりと体が揺れ耳まで赤くなっているのが見えた。 「誘うのも無意識だったんだな〜?」 『違う!2人きりだって、自覚なかっ』 言い終える前に黒尾の手が後頭部を押さえつけ上を向かせると強引に唇が塞がれた。 『んぅ』 「っは」 荒々しいキスの雨が止むとガッと勢いよく鉄朗の体を持ち上げ足早にリビングのソファに下ろし上に馬乗りになった。 『待って、ご飯冷めちゃう』 「んなもん後でチンすりゃいい」 『でも、お風呂とか…』 「ヤるの嫌?」 『そうじゃない、けど』 これからすると予測される行為に鉄朗は顔を赤面させながらうるっとした目で彼を見上げた。 そんな彼女の利き手を取って自分の下半身に当てふっと笑ってみせた。 「そんな可愛い格好しててお預けとか猫には無理だと思わねえ?」 『う、ん…』 観念した彼女は目を瞑ると今度は優しいキスが額に降りそそぎ指を絡めてソファに沈んでいった。 悪戯に誘う 「(ッは、エロ過ぎ)」 『ッもう、むりぃ…っ』 「(コスプレ最高だな、ハマる、かも)」 |