※全体的にひどい下ネタ
※橋田屋編ネタバレ


「…いや、あの、なまえちゃん、これは違うからね、あのね、」

そう言ってしどろもどろな私の恋人であろうその人は自分にそっくりな顔をした赤子を抱いて慌てている。隣にいるお妙さんがキョトンとしてこちらを眺めている。

「…銀さん…」
「本当に違うからね!?銀さんなまえ以外の女の上で腰振ったりしてな「色々最低です黙ってください」
「てめーは黙ってろ!俺の人生半分以上掛かってる緊急事態なんだよ!!」
「まぁ銀さん、なまえちゃんの事そんなに好きなのになんで浮気しちゃったのよ」
「あのほんと黙っていてくれません?マジで俺の邪魔でしかない」

そんな痴話喧嘩も頭に入らなかった。白くてふわふわのくせっ毛、死んだ魚のような目、ふてぶてしい態度。全てが銀さんの遺伝子を引き継いでますって感じがしてもう、あの、ちょっと可愛いのが悔しい。

「じゃ、私は先に帰りますから」
「ねぇほんとなんで勘違いするような言い方しか出来ないの?馬鹿なの?そんなに俺に恨みでもあんの?」
「星の数ほど」
「あぁそうかよとっとと消えろ!!」

そんなやり取りを背中で聞いて、やけに冷静な頭でゆっくり歩く。銀さんとお妙さんがいつの間に、あんな可愛い子を。悔しいとか、悲しいとか、色々な気持ちがぐるぐるして気持ち悪い。

「なまえ!待てって!」

肩を掴まれ無理やり振り向かされる、銀さんは割と本気で焦っている。

「…なんで?」
「え、いや」
「ねぇ、お妙さんとそういう関係なら私、銀さんと付き合わなかったのに」
「ちがっ、話を」
「もう銀さんとはセックスしない!!!土方さんとする!!ばーか!!!」
「なまえちゃん女の子なんだから!!!こんな所でそういうこと言わないの!!」
「もう25を超えれば女の子じゃないわよ!!女よ!!私だってその気になれば土方さんくらい落とせるってーの!!」
「あぁ余裕だろーよ!!だからだめだ、って」

無理やり口を手で覆われ引きずられる。ふと視線を移すと銀さんそっくりの子が死んだ魚のような、でもくりっとした目を向けた。うわ、可愛い。抱っこしたい。
その後が私を見てぐずりだす。やっぱりママの敵は僕の敵、って事なのかしら。慌てて銀さんを振りほどきその子を抱き上げる。

「銀さんこの子、おしめじゃないかしら」
「マジかよ…そろそろ来るかと思ってたんだがこんな時にっ」
「…仕方ないから、部屋おいでよ。外でやるわけにもいかないでしょ」
「…なまえ」

赤子を抱く私の腰を銀さんが抱き寄せる。ちょっとほっとした銀さんが、ありがとう、なんて真剣に言うから、何も言えなかった。



「…なるほど。捨て子」
「そーゆーこった。だから浮気してねーよ、ホントに」

すっきりしたその捨て子は、おしめを取り替えたついでに銀さんからミルクを貰って満足したのか、すぅすぅと寝息を立て始めた。この子、他の家なのに随分安心してるというか、豪胆な子だなと思った。そんな所も銀さんにそっくりで、まだ捨て子っていう話に信憑性が湧かない。

「…ごめんなさい。あんなこと言って」
「まぁ、なんだ。あの状況じゃ仕方ねーよ。気にすんな」
「…銀さん」
「それより、やっとガキも寝たことだし?」

ずいっと距離を詰める銀さんの顔を両手で抑える。むにっと顔が寄って変な顔になる銀さんが面白かったから、つい笑ってしまう。

「待って。先にあの子を返してからでしょうが」
「…ったく、つくづく子持ちってのは俺に合わねぇな」
「そうかな、なかなか良いお父さんしてたよ」
「お前のが良い親になるさ。きっとな」

ちゅっと触れるだけのそれをした銀さんが、よしっと気合いを入れて立ち上がる。やると決めた銀さんは私が泣こうが喚こうがもう、止められない。悔しいけどそういう人だ。

「なぁ、なんか紐ないか?おんぶ紐」
「えぇ…いきなり言われても…」
「だよなぁ、途中で買うしかねぇか。橋田屋のビルはデケェからなぁ、ずっと抱っこだと流石に辛い」
「………」

出来れば。危険なところには行かないでほしい。そんなこと言ってもこの人は行くだろうから何も言わずに立ち上がる。

「途中まで一緒に行こう、お見送りする」
「…おう。ありがとうな」
「えへへ、ねぇねぇヤンママみたい??」
「ヤンママって歳じゃねぇだろ…」
「失礼な」

赤子を抱いた私をまじまじと見つめる銀さんが、どこかいやらしい視線でにやりと笑った。

「まぁでもすげぇ似合ってるから、さっさと終わらせて可愛い可愛いなまえちゃんの上で腰振らねぇとな」
「最低です銀さん…」
「とゆー訳で、銀さんは無事に戻るので、今からパンケーキとイチゴ牛乳用意して待ってなさい。ね」

最後にギュッと私を抱きしめてにやりと笑う最低な彼がやけに眩しく見えて腹が立つ。
仕方ないとため息をついて、卵とパンケーキミックスを取り出した。


2017/08/20

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