「おはよう!レギュラス!」
「…」
「レーギュラスくーん?」
「…」
「先輩を無視するなんてひどいよ!君は、どこの寮だね!」

これだけ騒いでも無視なんて、見ての通りレギュラスは素直じゃない。このお坊っちゃんは、在り来たりな挨拶ではお気に召さなかったのだろうか。それとも単に、私が来たことにも気づかないほど本に夢中なのか。それはわからないけれど、依然としてレギュラスは顔を上げなかった。こんな扱いあんまりだ。最近は専らレギュラスに占領されてしまっているこの場所だが、本来ここは私のお気に入りの昼寝スポットだったのに。そう思いながら、私は仕方なくレギュラスの隣に腰を下ろしたのである。

「…先輩とは違って狡猾で有名なスリザリンですよ」
「やっぱり聞こえてたんだ!ひどい!」
「ええ、馬鹿みたいに僕の名前を呼ぶ先輩の声がとても耳障りでした」
「言葉が刺さるよ!」

先ほどの表現では足らなかったようなのでここで訂正をひとつ。レギュラスは素直じゃないうえに、とても辛辣である。厳しい言葉の雨に少しだけ泣きそうになっていると、レギュラスは読んでいた本をぱたりと閉じた。

「本、いいの?」
「先輩がうるさくて集中できないので、もういいです」
「…ほんとにレギュラスは可愛くないよね!先輩といると楽しいですとか言ったらどうなの?!」

私がそう言うとレギュラスはなにも喋らなくなってしまった。いつもは私が一方的に言われてばかりだけど、たまにはこういうのもありかもしれない。灸を据える、ってやつだ。そうやって私が少し得意気になっていると、いままで黙っていたレギュラスが口を開いた。

「ねえ、なまえ先輩」
「…なあに、可愛くないレギュラスくん」
「なんで僕がいつもここにいるかわかります?」

質問の意味がわからずにふるふると首を横に振る。するとレギュラスは珍しくゆるりと、口許を綻ばせて言うのだ。

「ここに来れば先輩に会えると思ったので」

…忘れていた。彼はあのシリウスの弟だということを。ブラック家の人間というのは、なぜこうもタラシばかりなのか。少しだけ、不安になった。普段は兄の影に隠れていて目立たないが、レギュラスも綺麗な顔をしているし、仲が悪くとも二人はちゃんとした兄弟なのだと、こんな瞬間に気付かされたのだ。私が口をつぐんでいると、レギュラスは私の髪を一房掬い上げて「これなら先輩の出来の悪い頭でもわかるでしょう?」なんて、ああ、やっぱりレギュラスは素直じゃない。


かわいくないやつ


20120408 title by Largo


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