教壇に立つルーピン先生を瞳に映すと、心臓がまるで別の生き物みたいにどくどくと脈をうつのが分かった。私の平凡な毎日は、ルーピン先生によってキラキラと輝く宝石に意図も簡単に変えられてしまうのだ。…私はルーピン先生に恋をしている。実に不毛な恋だと思う。幼い恋だと笑う人が多いし、ルーピン先生はきっと私の気持ちには答えてくれないけれど、私はそれでも構わなかった。





ルーピン先生は痛いくらいに優しい。スリザリンの、良くない噂ばかりの子にだって、ルーピン先生のくたびれた(ほんのちょっとだけ!)ローブを見てクスクス笑っている子にだって優しい。そんな優しいルーピン先生が私は大好きなんだけれど、やっぱり私にだけ優しくしてほしいなあなんて思ってしまうあたり、私はまだルーピン先生に焦がれるだけの子供なんだろう。


「はい、これで今日の授業はおしまい」


ルーピン先生が授業の終わりを告げる瞬間はいつも寂しい。パタパタと足早に帰っていく生徒を横目に見ていると「なまえ」と、愛しい声色で自分の名前が呼ばれたのが分かった。声のした方へと勢いよく顔を向けると、案の定いつもみたいに優しい微笑みを湛えたルーピン先生がいたのだ。


「なまえ、見てて」


そう言うルーピン先生はローブから杖を取り出した。それを軽く振るうと、教室中がキラキラと様々な色に光った。見たことのないような色ばかりで私は思わず声を上げてしまった。


「…気に入ってくれたかな」

「はい!とっても!」


私がそう言うと、ルーピン先生は嬉しそうに笑いながら私の頭を撫でてくれる。そしてルーピン先生は言うのだ。


「なまえが元気じゃないと私も寂しいからね」


その言葉が私にとってどれだけ嬉しいものか、ルーピン先生は知らないんだろう。私だけに優しくなくても構わない。今はこうやってルーピン先生と笑いあっているだけで、満足だ。


幸せの定義


110923


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