夏休みというものは学生にとって天国でもあり、地獄でもある。学校に行かなくていいし、友達と遊び放題なのはいい。けれど厄介なのはここぞとばかりに出されるたくさんの課題たちだ。自分でも頑張ってやろうとは試みたものの、不得意な英語はどうにもならなかった。頼みの綱であったえみちゃんは部活で忙しいらしく、私は幼なじみである蓮二くんにすがり付いたのである。





「蓮二くんのおかげで、全部あってたよ!」


私が興奮のあまり大きな声をあげると、蓮二くんは口許を緩めながら私の頭をえらいえらいと撫でてくれた。褒められて嬉しいのに、私は何故か胸が痛くなった。どくどくと大きな音をたてながら脈をうつ心臓がやけにうるさい。最近になって、蓮二くんを見ると胸が痛くなることがある。それだけじゃない、今も蓮二くんのいる左側だけが熱くて、なんだか少しむずむずする。不思議な感じ。これはなにかの病気なんだろうか。誰かに相談しようかとも迷ったけれど、もし本当に病気だったらと思うと誰にも言えなかった。ずきずきと痛む胸を見下ろすと、普通と何ら変わらない胸が瞳に映る。


「…まだ解らないところがあるのか?」


そう言いながら不安そうに覗きこんでくる蓮二くんを見て、またぎゅうと胸が締め付けられた。思わず「いたっ」なんて、声をあげてしまう。


「どうした?」


もういっそ、言ってしまおうか。蓮二くんは物知りだし、もしかしたらこの病気のことも知っているかもしれない。


「…私ね、蓮二くんといると胸が痛くなるんだけど、なにかの病気なのかなあ。」


勉強とは関係ないことだけど、私には大切なことだった。蓮二くんを見上げると「…どういう症状なんだ。」ああ、やっぱり頼りになるのは蓮二くんだけだ。思いきって相談してよかった!


「胸がずきずきしたりぎゅうって締め付けられたりして、とにかく苦しいの」


私がそう言った途端、蓮二くんは喉の奥でくつくつと笑い出した。そしてとびきり優しい顔をしながら「お前は病気だよ、それも厄介な」なんて言ったのだ。



盲目の恋



「なんで笑ってるの!?私、病気なんでしょ…?」

「嬉しいからだ。」

「うれしっ…!?蓮二くん意味わかんないよ!」




110822 夏っぽいのが書きたかったのにおかしいぞ


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