くるくると無意味に宙をさ迷っていた足を止めて、ショーウインドウをちらりと見やると、湿気に負けて髪の毛が崩れている自分の姿が映っていた。無造作に跳ねている髪の毛を必死に撫で付けるが、その手を離すとすぐに髪の毛は元通りに散らばった。思わず、深い溜め息が漏れる。気合いをいれてセットをしてきた髪も、梅雨の時期特有のあの嫌になる湿気ですぐにいつもの状態に戻ってしまうのだ。暖かくなってきたと思ったら、すぐに梅雨が始まる日本の気候を今日ばかりは恨んだ。


「待ち合わせ場所に来ないと思ったら、こんなところに居たのか」


どうにかならないものかとショーウインドウの前で模索していると、聞き覚えのある声が耳に入る。


「…蓮二くん!」


「しきりに髪ばかりいじっていたが、どうかしたのか?」


悩みに悩んで買った蓮二くんへのプレゼントをぎゅう、と握りしめながら「…くるくるになってて、恥ずかしいから」自分でも驚くくらい、小さな声で言った。


「なまえの雰囲気に合っていて好きだが」


蓮二くんを見上げると少し微笑みながら「髪のことだ」なんて。不思議と蓮二くんがそう言ってくれるだけで、あんなに悩んでいた髪も嫌じゃなくなる。今日は蓮ニくんの誕生日なのにわたしばっかり嬉しくなっている気がして、申し訳なく思う。そんなことを思っていると、突然指が絡められて優しげな顔をした蓮ニくんと目が合う。


「お前と一緒にいるだけで俺は楽しいよ」


まるで私の考えを見透かしたようにそう言われる。繋がれた手のひらから伝わってくるぬくもりが、心地よい。


なぜかって愚問


20110604 柳さんハッピーバースデー! title by Largo


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