目を開けた瞬間に、強く後悔した。今はまだ夜だ。しかも、真夜中。少し開いている襖の隙間から入る月の光のせいか、知らない場所のように思えた。(実際、そこまで馴染みはないが)


「私たちは隣の部屋にいるから、何かあったらすぐに来るんだよ!なまえちゃん!」


ふと芭蕉さんの言葉を思い出した。ああもう、だから一緒の部屋でいいって言ったのに。芭蕉さんが変な気使うからだ。別におばけだとか、そういう類が怖いというわけではない。夜独特のひんやりとした空気がただちょっとだけ嫌なだけだった。夜中に目を覚ますと、どうしようもなく恐ろしくなって、さっきまで眠っていた脳味噌やら体の機能やらがこぞって起きてきてしまう。つまりは、おばけが怖いのではなく、夜が怖いのだ、私は。

ぎゅう、と目をきつく瞑ってみても、寝返りを打ってみても、眠れない。私は意を決して布団から出ると、その足でそのまま部屋を出た。部屋の外は少し肌寒くて、自然と歩を進める足が早くなる。目的地は、すぐだ。

そっと襖を開けると、人の気配を感じる。それだけで安心した。小声で曽良くんと芭蕉さんの名前を呼んでみるけど反応はない。当たり前だけど、少しだけ寂しくなって、二人の布団の間に入った。右手は曽良くん、左手は芭蕉さん。ぎゅう、と手を繋いでそこから伝わる違う体温にまた安心して、私は眠りの世界へと誘われていった。


**


え、なにこれ!ねえ、曽良くん!知りませんよなんでなまえちゃんがいるの!だから知りませんって…あ、松尾分かちゃった!なまえちゃん、きっとハンサオに会いたかっオウッフ!すみません、不快だったのでつい…チクショー!……あ、お、はよう、ございます、芭蕉さん、曽良くん…なまえちゃん!おはよう!おじさん聞きたいことがいっぱヒョアビ!うるさい!



ハルジオンみっけ!



20110320


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