柳はいい人だ。どこがどうと聞かれたら上手く説明できないが、とにかく柳はいい人だ。柳みたいな人に愛される女の子は、どれほど幸せなんだろうか、なんて思うほど私にとって柳はそれはもうぎらぎらと、眩しいほどに輝いて見えた。この気持ちは憧れを越えてもはや信仰だと自分でも思うくらい、私は柳に陶酔していた。

そんなことを思っていた矢先のこと。それは突然だった。その日、とくに湿気が多いわけではないのに、私はなかなか髪型が決まらなかった。そういう時は決まって、なにか嫌なことがあるから覚悟はしていた。だけど、まさかこんなことだったとは。私だって、そんなこと聞きたくなかった。だけど朝早くから女子達が耳が痛くなるような高い声で騒いでいて、嫌にでも私の耳に入ってきてしまったのだからしょうがない。

簡潔に言うと、柳に彼女というものが出来たらしい。

それを聞いた時は、なんだか心の一部が欠落したような、怒りが込み上げるような、なんとも言えない気持ちになった。柳に対するこの気持ちを恋愛感情だとは微塵も思ったことは無かったのに、こうして柳が他の人のものになってしまったと思うとなんだか悲しく思えた。これは、一種の独占欲なんだろうか。私には分からなかったけど、この純粋な信仰心をあんな安っぽい恋愛という言葉で片付けたくは無くて、いっそこの気持ちも、色々な感情も、なにもかもを閉じ込めてしまいたかった。

ふと、上を見上げると空の色が重くて、呼吸が苦しくなるように思えた。もしも今の私の心が覗けたとしたら、きっとこんな色なんだろうか。ああ、頬が冷たいのは何故だろう。



吸ってはいて飲みこんだ


20110211 title by Largo


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