寒いのに何故か眠くてふあ、と欠伸をする。途端に走った痛みに私は声をあげた。


「どうした」

「…くちびる、切れた」


さいあくだ。ていうかなんで今みたいなタイミングで切れるの?なんでなう。みたいな。下らないことを考えていたら目の前に差し出されるなにか。


「ほら、塗っておけ」


よくあるあの緑色のリップだった。…うん、いや蓮二らしいといえばそうなのだけどね、


「いやいやいや!」


ほんとに、いやいや!っていう感じ。私の心が喋れるのなら、たぶんそう言ったはずだ。ていうか普通、こういうの逆だし、もし私がここで塗った場合、その間接きっ、キ、キスになってしまうわけで…。なんて一人で勝手に考えていると、


「塗ってやろうか」


なんて。蓮二のことだから固まった私を格好の餌食だなんて思ったんだろう。


「じっ、自分で塗ります!」


叫んだ。それはもう近所迷惑になるくらいの大声で叫んだ。そして蓮二が持っていたリップをふんだくって自分の唇に押し付けた。
するり。上唇、下唇とリップを移動させる。うわあ、めちゃくちゃ見られる…!ガン見ってもんじゃない。「…はい」とそっぽを向きながらリップを返したら聞こえるのは「間接キスだな、」という蓮二の声


言葉にされるとなんだか生々しさを覚えて顔中に全身の血が集まるみたい。外はこんなにも寒いのに私は真夏のようだった。


「うわあああ!もう蓮二なんか死んじゃえ!」

「こらなまえ、口が悪いぞ」

「ばか!あほ!細目!おかっぱ!」


言ってやった、という(世に言うどや顔)をしてみせる。ざまあみろ。私をからかった罰なのだよ!蓮二くん!


「…塞いでやろうか」

「言い過ぎました!」

「今さら遅い、塞ぐぞ」



薬用リップがわたしたちらしい


20110102 今年も柳さん共々よろしくお願いします!



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