幸せ



窮屈な仕事を終え、ご飯を食べ、お風呂に入る。

朝の早い明日に備え、未だ起きてる人が多いであろう時間にベッドに入る。

これが、ゆきの日常だ。

泣きたくなるくらいに、つまらなくて、愛おしい日常。


その全てが輝いて見えるのは、きっと。


そうぼんやりと考えていると、じんわりとゆきの腹に温もりが広がる。

その温もりの正体をゆきは瞬時に理解し、微笑んだ。


「ゆき、もっとこっちにくるんだ。」

そう言って少し乱暴に、でも優しく抱き寄せてくる愛しい人。

「やだ、これ以上くっついたらお互い潰れちゃうわよ。」

「いいじゃあないか。離れられないぐらいにくっついて、ひとつになるんだ。」


既に就寝する為、部屋の明かりは消している。のにも関わらず、ブチャラティの熱い視線をゆきは捉えた。

そして、そんなブチャラティに応えるようにゆきも熱の篭った視線を返すのだ。


「好きよ、ブチャラティ。」

「俺は、愛してる。」

先程よりも強い力で引き寄せられる。全身で強い愛を感じれるこの瞬間が、堪らなく好きだ。


きっと、これを幸せと呼ぶのだろう。


月明かりに照らされていたブチャラティとゆき。

瞬間、まるで雲が2人をこの世界から隠すかのように月を飲み込み、闇に溶けた。


幸せ
そして身も心も溶けきって、手を繋いで寝るの。


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