心の模様替え
私は今日、人生最大の失恋をした。
大好きで大好きで、この人と一生を共にするんだ。って思っていた相手。
だけど、相手はそう思っていなかったみたいで、
「・・・バカみたい。」
しばらく、くよくよ泣いて。お腹がすいて、ご飯を食べて。また思い出して、くよくよ泣いて。
傷も癒えない私を置いて、ただ日々が流れていくだけの毎日。
だけど確かに時間という薬はちょっとずつだけど効いているようで、涙する回数はほんのちょっぴり減っていた。
今まで彼の趣味に合わせていた服は、全部捨てた。メイクも、髪型も、ぜんぶぜ〜んぶ新しくした。
本気の恋だったから、まだ心は痛いけど買い物に行けるまでに回復出来た。
そんな今日は、ネアポリスの街へと新しいワンピースを着て出掛けた。
全てが新しく見える、不思議な感覚だった。
「…あれ?もしかして、ゆき?」
「…?わ、ジョルノ!ジョルノじゃあない!久しぶり!」
可愛い服のウインドウを覗いていると、ふいに後ろから声をかけられた。
「あれ、なんかゆき…雰囲気変わりましたか?」
「あは、バレた…?実はね、彼氏にフラれちゃって。服とか全部、前の彼氏の好みだったからさ。」
へへへとジョルノに向かって笑う。
ジョルノとは、街でたまたま仲良くなったのだ。私よりも何個か若くて、下らない話でもちゃんと聞いてくれる優しい子。
そして、何よりもその綺麗な顔がゆきは好きだった。
「…別れたんですね。」
ポツリとジョルノが呟いた。
「ん?なんか言った?」
「いえ、なんでもないですよ。それよりゆきは新しい恋を見つけようとは思わないんです?」
にっこりと、花が舞うような綺麗な笑顔で微笑むジョルノ。
「え?う〜ん、まだ別れたばっかだし…なんにも考えてないかも…」
「じゃあゆき。僕が立候補してもいいですか?」
「うん、…って、え!??」
思わず「うん」と言いかけたが、脳が処理した言葉に慌てて聞き返す。
「ご、ごめん、なんか聞き間違えちゃった。もう1回行ってもらっていい?」
「聞き間違いなんかじゃあない。僕はゆきが恋人と別れて、正直嬉しいんです。」
ゆきの手を取り、ジョルノは続ける。
「だから、真剣に考えて下さい。僕は本気です。」
あまりのジョルノの真剣な眼差しに、ゆきの心臓はまるで甦ったように鼓動が早くなる。
「う、うん…。」
そうゆきが呟くとジョルノはほっとしたように息を吐き出した。
「で、でも、ジョルノ。本当に私でいいの…?だってジョルノってばイケメンだし、モテるし…。」
そう問いかけると、ジョルノは先程までの余裕な姿が崩れ、恥ずかしそうに顔を赤く染め上げた。
「…ずっとゆきが好きだったんです。彼と付き合ってる時から。でも、僕の想いを伝えたらゆきを困らせてしまうと思って。だから、僕は本気なんです。」
手の甲で顔を覆うジョルノが、かっこよくて、可愛くて。
ジョルノにつられて頬が赤くなったゆきは、自らの恋の始まる音が聞こえた気がした。
どうやら、心の模様替えは完了したようだ。
心の模様替え 懐かしい胸のときめき
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