手を繋ぐ



部屋は至ってシンプル。

清潔感溢れており、不要なものはなく、家具達はこだわり抜かれたお洒落な配列。

壁には、漁師が使うべきであろう網が飾られていた。シンプルな部屋には少し不釣り合いな筈なのにオシャレに見えるのは、持ち主のセンスが良いからなのだろう。


その部屋の隅にある、大人2人が悠々と横になれるキングサイズのべッド。

そこに、まるで離れまいとするように肩をピッタリ寄せ合い眠る男女の姿があった。


ブローノ・ブチャラティと#その恋人ゆき。


ブチャラティの部屋へと半ば転がり込むようにやってきたゆきであったが、今となっては寧ろブチャラティよりもこの部屋へ長くいるように思う。


「ね、ブチャラティ。」

ゆきがそう言うと、ブチャラティは何も言わず右手をゆきの腹の上へと置く。

満足そうに微笑んだゆきはブチャラティの右手を自身の左手で握った。

指と指の間で握る、所謂恋人繋ぎってやつだ。


「好きよ、ブチャラティ。」

「あぁ。俺もだ。…おやすみ、ゆき。」

繋いだ手はゆきの腹の上のまま、その言葉を合図に2人は会話をやめた。


いつからか2人して寝る時は、手を繋いで寝るのが習慣になっていた。お互いの手の温もりを感じながら眠りにつく。

その瞬間が、ゆきは堪らなく好きだった。


幸せだなと感じるし、何よりもブチャラティが傍にいることが安心するのだ。


「(この手が離れなければいいのに。)」


ブチャラティの呼吸を感じながら、徐々に薄れていく意識に身を委ねた。


手を繋ぐ
夢の世界でもはぐれないように


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