いくつかの告白



「ジョルノ、おはよう!」

「あぁ。おはようございますゆき。」

太陽の光が差し込むハイスクールの廊下で、見慣れた美しい金髪のジョルノ・ジョバァーナに話しかける。

陽の光によってキラキラ輝くジョルノはまるで、神様のように神々しい。


ジョルノはその美しさで、ハイスクールの女の子達を虜にしてきた。そして、ゆきもその内の一人なのであるが。


一時期、ジョルノはハイスクールに来なくなった。

ギャングに喧嘩を売って殺された、とか、お父さんの故郷に帰った、とか様々な噂が飛び交ってたのだったが、真実は今でも不明なのである。


ゆきは思う。結局今、ジョルノはハイスクールに戻ってきたし、仲良く友達として一緒にいれるのだからいいのではないのかと。


しかしそんなゆきの考えをよそに、二人の関係は変化しようとしていた。


「そうだゆき、いま時間大丈夫ですか?」

「え、いま・・・?うん、大丈夫だけど・・・」

「よかった・・・ここではなんなので、場所を移動しましょう。ぼくについてきてください。」


ジョルノはゆきの腕を取り、歩きだす。なんだかジョルノに握られた部分が熱を持っているように感じた。


ジョルノが足を止めたのは人気の無い屋上だった。さわさわと優しい風が、ジョルノとゆきの髪を揺らす。


そして振り返ったジョルノは、ゆきを見て柔らかく微笑んだ。


「ようやくぼくにも覚悟が出来たんです。・・・話を聞いてください。」

「覚悟・・・?」

ジョルノの言葉を不思議に感じながらも、コクリと頷く。


「・・・ぼくはゆきのことが好きです。誰よりも優しくて、綺麗で、純粋なゆきが好きです。」

「え・・・っ。」

「やっぱり・・・。ぼくとしては、あからさまな態度をとってたつもりなんですけど気付いてなかったんですね。」


ジョルノのその言葉に驚きつつも、確かに女の子に冷たい反応を示すジョルノが私には優しく接してくれているなとは感じていた。

でもそれは女の子として見ているのではなく、友達として見ているからそういう態度なんだと思っていたのだ。


「ジョルノが、私のこと好き・・・?」

「はい。どこの誰よりも。ゆきの事が好きなんです。・・・でも」

ジョルノはどこか悲しそうな目でゆきを見て、少し言葉を迷っている。


「・・・でも?・・・なに?」

首を傾げ、聞き返すゆき。ジョルノが口を開くと同時に、強い風が二人を包み込む。


「ぼくはギャングなんです。」

「・・・ちょ、ちょっと待って。」

「ゆきも聞いたことくらいはありますよね・・・?パッショーネ。それがぼくがボスを務めるギャング組織です。」


ギャング集団、パッショーネ。

それくらいこのネアポリスに暮らす人は皆知っている。ギャングといっても昔ほど凶悪なものではなく、最近は積極的に麻薬を排除したり、街に不穏を与える人をやつけたりと、住人に積極的に寄り添っている義賊みたいなものである。

そんな組織の、ボスがジョルノ・・・?


「うそ・・・」

「本当です。ぼくは冗談を言うなんて、そんな無駄なことはしません。」

驚くゆきをそのままに、ジョルノは言葉を続ける。


「ゆき。もし、ぼくの元に来てくれるならこの手を取ってください。・・・少しでも迷いや不安があるのならば、この話は忘れてください。・・・ぼくはもう二度と、ゆきの前には現れません。」

ジョルノはゆきの前に、右手を差し出してきた。急なことでゆきはひどく動揺し、ジョルノの顔と右手を交互に見る。


冗談だと思いたかったが、真っ直ぐ見つめるジョルノの目は本気だ。それに、無駄が嫌いなジョルノが嘘を言うとは思えない。

それでもゆきの中で、ジョルノともう二度と会えなくなるのは耐えられなかった。想像するだけで、心が冷え切る。もう、あんな想いはしたくないと思ったのだ。


驚きはあったがゆきには、迷いや不安はひとつもなかった。

ジョルノについて行けば、きっと正しい幸せな道にゆきを導いてくれると信じているから。


ゆきはジョルノの差し出された手を、そっと握り返す。

・・・ずっと好きでした。

その一言は、風のいたずらにかき消されて辺りに消えていった。


いくつかの告白
初めて出会った瞬間、恋に落ちたのを
貴方はきっと知らない


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