4部 short小説 | ナノ

たったひとつの 1/4



仗助は朝からドキドキしていた。

今日はなんたってバレンタインデー!


男にとっては今日はチョコを貰える特別の日。

仗助達学生は、その貰えた数を自身のモテ度として表す絶好のチャンスなのである。


いつもよりも念入りに髪型を決め、鏡の前で再三チェックしてから家を出た。

ちょうど外には親友の億泰がいた。



「よォ億泰!」

片手をあげ、挨拶をする。

「よォ仗助!今日は早ェなァ!!」

いつもギリギリの仗助に対して、億泰は意外そうな顔をした。


「そりゃあお前ェ、今日はバレンタインだぜッ!?」

仗助はふふんとどや顔で億泰を見る。


「おぉ!そういえばそうだったっけなァ・・・?」

億泰は首をかしげ頭をかく。


「ばっか億泰ッ!今日は男にとっての戦争だぜ?・・・どれだけチョコが貰えるか、それが今年一年の俺達の価値が決まるんだ。」

眉間に皺を寄せ、ぐっと手を握りしめる仗助。


「そうかァ・・・?俺チョコとかそんな貰った事ねェから気にした事ないけどよォ・・・。」

ポケットに手を入れて歩く億泰はそのまま続ける。

「それに仗助はよォ、可愛い彼女ゆきちゃんがいんだからいーじゃあねェかァ?」


仗助は高校になって付き合い始めた、ゆきとの初めてのバレンタインを迎えた。


もちろんゆきからのチョコには心から楽しみにしているし、昨日もドキドキしてなかなか寝付けなかったのだ。


しかし沢山今までチョコを貰っていた仗助は、どれだけ貰えるかも重視しているのだ。


「ゆきからのチョコもよォ、大事っちゃあ大事なんだがよ・・・とにかく億泰ッ!!どれだけ貰えるかも大事なんだっつーのッ!!」


仗助と億泰は互いにチョコに対する価値観を話しながら、学校へと到着した。

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