キズを治せる君へ 1/2
今日も、与えられた任務で失敗し大怪我を負ってしまった私は、ジョルノ・ジョバァーナにキズを治してもらっていた。
「…またですか、ゆき。」
「ごめ…んね、ジョルノ…。」
負った傷のせいで上手く喋れないゆきは、なんとか返事をする。
ゆきはパッショーネに所属しており、組織の頂点に立つジョルノ・ジョバァーナにとって信頼のおける部下である。
と、同時に恋人でもあった。
もちろんお互い仕事に私情は挟まないし、どんなに危険な任務であっても、適役だと思った人物に仕事を任せる。
今回も、ジョルノは私に適役だと思って任務を与えたのだ。
だいぶジョルノにつくって貰った"皮膚の部品"のおかげで、痛みは相変わらずあるが動ける様になってきた。
「今回は、」
ジョルノが呟く。
「ん、ジョルノ…何?」
上手く聞き取れなかった為、もう一度尋ねる。
「今回は、何故そんな大怪我を負ったんですか?」
一瞬時が止まる。
ゆきは、ギャングとしての腕は確かである。
冷静な判断力もあるし、行動力もある。そして、スタンド能力も十分に使いこなせている為かなり戦いとなると強い。
なぜ、そんな彼女が大怪我を負ったのかというと。
「また、殺すのを躊躇ったんですか…?」
「…っ。」
「…何も言わないって事は、そうなんですね。」
ジョルノは何度目かになる溜め息をついた。
ゆきは昔から、人を殺すことを躊躇ってしまうのだった。
ギャングとしては致命的である。
今でもその癖は治っておらず、躊躇した際の一瞬の隙をつかれてしまい、いつも深いキズを負ってしまうのだった。
「ゆきは優しい人だ…。いつの時も、その相手の可能性を想って生命を奪っていいのか迷っている。」
ジョルノはそう言い、ゆきを抱きしめる。
「こんなに怪我まで負って…。怪我は治せても、痛みは治せない。あくまで僕の力は"部品をつくる"事はなんだから。」
ーーーそれに、心の痛みも治せない…
ジョルノは辛そうにゆきに言う。
「(そんな顔をさせる為に、私は戦ってるんじゃあないのに…)」
ジョルノの顔を見てゆきは目を伏せる。
ジョルノを護るためにゆきは、がむしゃらに任務をこなしてきた。
しかし結果的には、ゆきの傷の分だけ同じようにジョルノも心を痛ませていた。