infermieraのお仕事 1/4


私、愛咲ゆきの職業はインフェルミエーラ(看護師)である。


育った街の人々を助けたい。その一心で夢だったインフェルミエーラとして、ここネアポリスの病院へと就職したのだった。


「愛咲さん、これもよろしく!」

そう、先輩からカルテ整理を頼まれる。


まだまだ下っ端の私は、主に雑用中心の仕事をこなしており、少しでも早く1人前になりたいと日々切磋琢磨しているのである。


そんなある日の事。

仕事に勤しんでいると、院長先生に呼ばれてるわよ。といつもの先輩から伝えられた。

何かやらかしたっけ…なんて、ぐるぐる頭の中で大きくなっていく不安と共に院長室へと向かう。


コンコン

「失礼します。」

「入ってくれたまえ。」

部屋の中から、院長先生の聞き慣れた味わいのあるしゃがれた声が聞こえる。


恐る恐るドアをあけ、一礼し部屋へと入室する。

部屋独特の香りに、無意識に背中がひやりとした。


「今日は君に、お願いがあってのう。」

「…お、お願いですか?」


てっきり小言のひとつでも言われると思っていたゆきは、驚くと同時に胸を撫で下ろした。


「うむ。熱心に働く君にならと、頼みたい事があっての。」

「はぁ…私に出来る事でしたら…。」

院長先生は、その言葉を待ってましたとばかりにゆきの瞳を見る。


「実はのぉ…昔からうちの病院が世話になっとるやつらの面倒を見てもらいたいんじゃ。なかなか怪我の絶えない連中でな。…あまり大っぴらには出来んから、内密に…な。」


「それでしたらっ!私なんかでよければ、ぜひ!!!」


ようやく憧れのインフェルミエーラらしい仕事が出来る!と一瞬にして舞い上がったゆきは、即答する。


「君ならそう言ってくれると思ってたよ!!!…何かあれば彼らは来ると思うから、その時はくれぐれも宜しく頼むよ。」

「はい!任せてください院長!!!」


このネアポリスの為に、ついに腕を振るうことが出来ると思ったゆきは喜びと期待で胸を膨らませ、いつもの仕事へと戻るのだった。


※ infermiera(インフェルミエーラ)
…イタリア語で看護師の事。

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