希望 1/4
彼がいなくなって、もう随分と月日がたった。
私の時間はいまも止まったままだ。
とある街のギャングだった彼。
まるでギャングとは思えないほど、優しくて、強い意志をもっている男だった。
彼は自分が傷ついたとしても、懸命に仲間を守っていたのだ。
いつも仕事から帰ってきた時は傷だらけで、でもその顔は、どこか誇らしげだった。
そして私はそんな彼の顔が、大好きだったのだ。
あの日も、いつもの様にボロボロになりながら、しかし笑顔で帰ってきて抱きしめてくれると思っていた。
ーーーー愛してる。
そう言って家を出てから、1度も、彼は戻って来ていない。
もしかしたら、もしかしたら…
帰ってくるかもしれない。そう希望を捨てずに、彼が帰ってきた時、抱きしめて上げれる様に、今日も私はいつも通り生活を続ける。
今は午後1時過ぎ。
先程お昼ご飯を食べ終えたので、そろそろ食器でも洗おうかな。後回しにしちゃうと、動けなくなっちゃうんだよな。と自分の性格に苦笑いをする。
よいしょ、っと席を立つとーーーー
ピンポーーーーーーン。
玄関のチャイムが、静かに部屋に響いた。
滅多に鳴る事がないチャイムに、首を傾げながらも「はーーい!」っと返事をする。
小走りで玄関へ向かい、ガチャリ。とドアを開けた。