1番に伝えたい/ジョルノ


4月16日。

それは誰が望んだ訳じゃあないのに、ぼくがこの世に生まれてから15回目となる誕生日だ。

生まれた日なんてものは、どうせ生きていれば嫌でもあと何十回も経験する物であり、いちいち祝うなんて行為は無駄なものと考えているジョルノにとって、今日もいつもと変わらぬただの普通の一日なのである。


ネアポリスにあるハイスクールの寮に住むジョルノは、自室で一人ベッドに寝転がっていた。

今日も朝から退屈で暇を持て余しているのだ。

無駄を嫌うジョルノはこの時間をも惜しく思え、最近始めたばかりの"アルバイト"にでも行って小遣い稼ぎでもしようかと悩んでいた。

が、すぐにジョルノはひとつ名案が浮かぶ。

思い立ったらすぐ行動。

ジョルノは勢いよく起き上がると、部屋の扉へと歩きながら軽く服を整えた。

結ってある金髪は、寝っ転がっていたのにも関わらず綺麗なままだ。歩く度、意思を持っているかのようにジョルノに合わせて揺れる。

静かに扉が閉まる音がして、ジョルノは部屋を出て行った。


「ジョルノ〜!よかったら一緒にお茶しない?」

「今日ジョルノお誕生日でしょ?お願い!あたしが払うから〜!」

「これ、プレゼント!ジョルノのために選んだのよ!」

キャピキャピという言葉が正に似合う、同じハイスクールに通う女生徒達から声をかけられる。

ジョルノが歩くペースに合わせて女の子達はついて行く。しかし当のジョルノは無言で颯爽と歩みを止めない。

「ねーねージョルノ〜!」

何処までもついて来ようとする女生徒に、ジョルノは溜め息をつく。

「うるさいな、ぼくはこれから用事があるんだ。いつまでもついてくるなよ。」

チラリと女生徒を見て告げる。

一見きつく言っているように聞こえるが、女生徒達は特に気にする様子もなく「は〜い!また遊んでね、ジョルノ!」「チャオ〜!」と嬉しそうに去って行った。

ジョルノの手元には、色とりどりのラッピングされたプレゼントが残る。

どうしたものかとプレゼントを抱え、道行く人の視線を受けながらも変わらずジョルノは歩き続けた。


「あ、ジョルノ。…って、凄い荷物ね。」

不意に後ろから聞き慣れた声が耳に届く。先程とは違ってジョルノは勢いよく振り返る。

「ゆき!丁度よかった。いまから会いに行こうと思っていたんです。」

「え?私に?じゃあ、ほんと丁度良かったわね!私もジョルノを探してたの。」

「ゆきが?」


ジョルノ自身はゆきをお茶に誘う為に探していたのであったが、思い当たる節が見つからず、首を傾げる。

「やだ、ジョルノってば。今日あなた、誕生日でしょう?」

くすくす笑いながらゆきはジョルノを見る。

「…ゆきまでそんな事を言うんですか?」

「そんな事って?」

今度はゆきが首を傾げた。

「誕生日ですよ。誕生日なんてものを祝うなんて、無駄じゃあないですか。自分のはまして、他人のなんて。」

その言葉を聞くや否や驚きで目を見開くゆき。

もともと大きな目をしているゆきの目は、今にも溢れそうだとジョルノはぼんやり思った。

「…ジョルノ、あなたそれ本気で言ってる?」

「ぼくは同じ事を二度言うのは嫌いです。」

「そうだったわね…。別にジョルノの考えを否定する訳じゃあないわ。確かに、何十回と迎える誕生日を毎回祝うのって大変だものね。」

そうでしょう、とジョルノが声を発する前にゆきは更に言葉を続ける。

「でも、その大変な思いをしてでも、大切な人がこの世へ誕生してくれた日を祝いたいって思うのは当然の考えよ?私だってそうだもん。毎年、これからもずっとお祝いしてあげたいわ。生まれてきてくれて、ありがとうって。」

「…そうで、しょうか。」

「そうよ。少なくても、私はジョルノにそう思ってるわ。…という事で、受け取ってくれるわよね?」

小さく、しかし小綺麗な手提げ袋の中に、立派な装飾が施されている箱がジョルノの視界に入る。

「…もちろんです、ゆき。ありがとうございます。」

「ジョルノの事を思って、一生懸命選んだのよ?…その荷物達、持ってあげる。開けてみて?」

「ありがとうございます。」

持っていた荷物達を静かにゆきに渡す。そして、無意識にドキドキと高まる鼓動を心の中で鎮めながら、箱を開ける。

「これは…ピアス…?」

太陽の光を浴びてキラリと光る青色は、まるでジョルノの瞳のようだった。ゆきはジョルノのその瞳の色が好きだった。

吸い込まれるような美しい色の瞳は、全てを包み込む海のようで安らぎと安心感を与えてくれる。大袈裟のようだが、ジョルノの瞳はゆきからすれば神々しいのだ。

「…ジョルノみたいだなって思って。」

「すごく、綺麗です。」

「ふふ、ジョルノ、嬉しい?」

大事そうにピアスのケースを持つジョルノは、何処からどう見ても嬉しそうで。思わずゆきから笑みが溢れる。

「今ぼくは、思っている以上に嬉しいみたいだ。…ありがとうございます、ゆき。誕生日が、こんな嬉しいものなんて…思っていなかったです。」

少し照れたようにジョルノは、はにかんだ。

「でしょ?私もジョルノが喜んでくれて嬉しい。ジョルノと一緒に、ジョルノが生まれた日を共有できて、幸せよ。」

「ゆき…。」

ジョルノがあまりにも真剣な眼差しでゆきを見るので、次第に小恥ずかしさに耐えきれなくなってくる。

「そ、そうだジョルノ!このプレゼント達、お家に持って行くの手伝うよ!その後、一緒にお茶でもしない?」

「いいですね、ぜひ。喜んで。」

「じゃ、じゃあ、さっそく行こう!こっちだよね?ジョルノのお家!」

ジョルノの返事も待たぬまま、ゆきは荷物を抱えたまま歩き出す。そんなゆきの背中をジョルノは愛おしそうに見つめていた。


ゆきが教えてくれた、誕生日を祝う意味。胸が暖かくなる感覚にジョルノは思う。

ゆきがしてくれたように、自分もゆきに"生まれてきてくれてありがとう"と伝えたいと。

そして、その時は一番初めに伝えたいとも。自分に芽生えた気持ちを大切に秘め、ジョルノはゆきを小走りで追いかける。

「待ってください、ゆき。ぼくも持ちます!」


1番に伝えたい
君からの祝福の言葉で、世界が色づいて見えた。


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