歩む道 1/4
昔から、人には見えないものが視えていた。
幼かった私にはソレが視えることが"異常"であることなんて知らなかった。
周りと不思議なソレの話を共有したくて必死に伝えていた。
皆に視える筈もなかったのに。
次第に私は"おかしな子"のレッテルを貼られ、周囲の人々から避けられる様になってしまった。
もちろんその事は私の心に重大なキズを残し、もうあんな思いをしたくなかった私は二度とソレの話をする事はなくなった。
他人から視える筈のないモノがずっと傍にいる。
そんな奇妙な存在を無いものとして生きてきて、どれくらい経ったのだろう。
おかげで私の事を"おかしな子"と呼ぶ人はいなくなった。
コレでいいんだ。
目立たず、平穏に。
普通の人として生きることを望んでいたゆきにとって、幸せである筈の人生を手に入れる事が出来たのだった。
そんなつまらない、しかし幸せな筈の日々を過ごしていたある日のこと。
親とはとうの昔に決別し、一人で暮らしているゆきは食糧の調達をする為買い物に来ていた。
「(今日は早く帰ってゆっくり休もう。)」
度重なる仕事に疲れていたゆきは、一刻も早く家に帰りたかった為、近道として普段は使わない裏路地を通ろうと考えた。
今まで危険に巻き込まれた事もなかったし、ほんの少しだけなのだ。
大丈夫だろうと判断したゆきは、少し早足で裏路地へと歩き始めたのだった。