雨の日の逃亡計画 1/3
今日も私は、息が詰まるような空間から逃げるように窓の外を見つめる。
何度この窓の向こうに飛び出したいと思った事だろう。
囚われの身となったのは、いつの事だったか。
もう思い出せない程時間が経っているように感じた。
もしくは、閉鎖的なこの空間がそう感じさせるのかもしれない。
日時の確認をする術のないゆきにとって、その疑問は確認しようがなかった。
いつもの時間、決まったタイミングで窓から見える白いスーツの青年。
きっとこのゆきが囚われている屋敷に用事があって来ているのだろう。
何故か目で追ってしまう青年を眺めるのが、ゆきの日課になっていた。
そんなある日の事。
「(…雨だ。)」
そろそろ青年が現れる時間だ。
そう思ってゆきは窓際へと近づく。
ざあざあと雨が降っている窓の外は、いつもと違って見える。
そしてざわざわとする胸騒ぎと呼ぶべきなのか、ゆきの心の中は何故か落ち着かなかった。
「(何か、騒がしい…????)」
そう思い、部屋の入口にある扉へと視線を向ける。
屋敷の中がざわついているような気がするが、頑丈に施錠されているこの部屋から出る事が出来ないゆきは、ため息をつき窓へと視線を戻す。
「今日は…いないのね…。」
青年の姿を見ることが楽しみになっていたゆきにとって、それはとても寂しく感じたのだった。