5年越しの 1/5
この美しいイタリアの街へ越してきて、早3ヶ月。
私の故郷、日本とは大分違う文化にようやく慣れてきた頃でもある。
スリ、ナンパ、恐喝。
美しい街とはいえ、治安は恐ろしく悪いのだ。
特に、イタリアでは物珍しい日本人。
か弱く、華奢で童顔。格好の獲物である。
以前は毎日スリに会い、声を掛けられては更にスリに会うーーーそんな毎日であった。
小さく分けてお金を持ち歩いたり、少しでも大人っぽく見せる為、濃いめのメイクをしたり、ヒールを履いたり。
地理を覚え、より治安の悪い所へは足を運ばない。
これを徹底する事により、平和な日々を過ごせる様になったのだ。
余裕も生まれ、ここへ来た時の事を思い出す様になった。
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「ん〜っ!!!やーっとついたぁ!!」
約12時間のフライトを終え着いた、イタリアはネアポリス。
「ネアポリスを見て死ね」
という言葉がある様に、とても美しい街である。
なぜ、ネアポリスに来たかと言うと…
私、愛咲ゆきは人生に疲れたのだ。
息が詰まる様な生活。
毎日毎日同じ事の繰り返し。
「僻み」「嫉み」「妬み」「辛み」
社会の柵(しがらみ)に揉まれ、私の心はすり減っていた。
そんな中、語学勉強も兼ねて、ネアポリスへ旅行に来た時の事を思い出したのだ。
全てが新鮮だった。
見知らぬ人をも大事にする心の優しさ、明るさ。
全ての人を虜にする様な、美しい街並み。
まるで、街がキラキラ輝いているようだった。
私は、惚れてしまったのだ。
この、ネアポリスのいう街に。