一時休戦

「あっ、お兄さん黒牙會の人やね!ちょっとうちに殺されてや」
「アホかお前、何言うとんねん。ちょっと邪魔やで、通してや」

そう言いながらこちらに向かってくる紅灯商会のピンク髪の女を軽くかわした。女子高生のなりをしている癖に銃器を持っているとかどんな趣味なのか。よく分からなかったのでさっさと撒いてしまおうと壁をすり抜けた。後ろから「あれ!?」と声が聞こえた気がした。すり抜けるとすぐに壁を背にへたり込んだ。なんやアレは。軽くかわしてすり抜けたものの内心はびびりまくりだ。すり抜けることにビビらなくてすんだから良かった。銃器の扱いに長けている(勝手な予想だが)女子高生と対峙なんぞしたくなかった。こっちの武器はジャケットの内ポケットに入れたバタフライナイフしかなかった。武器は先程の女子高生に会うまでに全て使ってしまった。血肉がついて使い物にならなくなった。
はあ、と溜め息をはいて辺りを見回すと、豪華な造りのドアと高そうなテーブルとソファがあった。座るとふわふわと柔らかい。先程までの喧騒を忘れて少しの間横になって休んだ。

轟音と絶叫が聞こえて目を覚ました。壁につけられた振り子時計を見やると、まだ十数分しか経っていなかった。閉められたドアのおかげで俺がいることを誰にも気づかれていないようだった。というかこのフロアにどれぐらいの人がいるのだろうか。誰もいないのかもしれない。ソファから立ち上がり、ドアへ向かった。金色のドアノブに手を掛けると、背筋に悪寒が走った。開けて地上を目指さなきゃいけないのに、開けたくない。ドクドクと心臓の音がうるさく響いた。静かにノブを回してゆっくりとドアを開けた。

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