対、番、鏡の君と


レドさんに付き合ってもらって、雑貨屋に行った。
カラフルな内装にカラフルな小物やアクセサリーが陳列されてある店内を、レドさんはきょろきょろと珍しそうに見渡した。
私の後をついて歩くレドさんが、なんだか年上には思えなくて少し可愛いと思う。

「レドさん、こっちですよ」

くい、とレドさんの袖を引っ張れば、するりと手を繋がれた。
にこにこと笑いながらレドさんが言った。

「よくわかんないから、ティナについてく」
「えっ、あの、あ、うん、はい、わかりました」

きっと耳まで真っ赤になっているのだろう。
耳が熱い。
繋がれた手も熱い。
じんわりと繋がれた手に汗をかいたのがわかった。
手汗びしょびしょなんて、うううつらい。
そんなことを思いながら目当ての品を探した。
手はしっかりと繋いでいた。

「これ?」
「うーん、どっちの色がいいですかね?」
「んー、こっち?」
「ならその色で」

レドさんが指差した方の色を選び、清算しにレジへ向かった。
喜んでくれるといいな。
そう思って手に持った品を見た。

「喜んでくれるといいね」

頭上からの言葉にパッと振り返れば、にこにこと柔らかい表情のレドさんと目があった。
また顔が熱くなった。


−−−−−−


手を繋いで家まで帰った。
手が熱い。耳も熱い。顔も熱い。
レドさんは気にもしていないようで、ふんふんと鼻歌を歌っていた。
手を繋いでいる嬉しさと緊張でよろよろと歩く私の歩調にあわせてゆっくり歩いてくれている。
日が傾いて建物は赤く染められていた。
レドさんの白い髪に夕日の赤が当たってキラキラしていた。

−−−−−−−−


「ただいま」
「おかえり!」

帰って早々ぽふりと抱き付いてくるのは双子の弟のメイ。
ぎゅっと抱きしめ返して、頬にちゅっとキスをすると、メイは嬉しそうに目を細めた。

「うさぎさんがごちそう作ってまってるよ!」
「うん、ごちそう楽しみね。でもその前に、メイにプレゼント」

そう言って両手に収まるサイズの可愛く水色のリボンでラッピングされたピンクの包みを差し出した。
差し出された包みを見て目をぱちぱちと瞬かせるメイ。

「え、これ、僕に?」
「そう、私とお揃い。あの、気に入ってくれるか、分からないけど……」

しどろもどろに言う私の差し出した手をきゅっと握り、メイが笑った。

「んーん。絶対お気に入りになるよ。だってティナ姉とお揃いだもん」

そう言って笑う弟に、以前のような歪んだ感情は感じられなかった。
ああ、この子も、変わったのだ。
永久機関を抜けて魔女と暮らし出してから瞬く間に変わったメイを見て、改めて、誕生日を迎えたのだと思った。
メイの柔らかい手に包まれる両手があたたかい。
不意にポロポロと涙がこぼれた。

「えっ! どうしたの、ティナ姉? 泣かないで! プレゼントは後で一緒に開けよう? ね!」

涙が止まらなかった。
その理由もしゃくりあげる喉では伝えられなくて、メイとレドさんを心配させるばかりだった。
おろおろしながらメイがぎゅっと抱き締めて慰めてくれる。
後ろからはレドさんが、どうしたの、と聞きながら頭を撫でてくれた。

「違うの、ごめんなさい、ごめんね、メイ、違うの、嬉しいの、嬉しいのよ」

途切れ途切れに言葉を紡ぐ。
うまく話せない私を急かすこともなく、うん、とメイは聞いてくれた。
メイの短く切った髪を、すっと手ですいた。
あんなに私にそっくりで、女の子みたいに可愛かったメイは、長かった髪を短く切り、スカートを穿くのをやめた。
あんなにべったりだったのに。
少し寂しいと身勝手なことを思いながらも、弟の変化を素直に嬉しいとも思っていた。
じっと私の言葉を待ってくれるメイに、ちゅっと頬にキスをした。
目をぱちくりされるメイに、笑顔で言葉をプレゼントした。


「メイ、誕生日おめでとう、一緒に生まれてきてくれて、ありがとう」



end.
(2013/2/10)

アリベル双子誕生日おめでとう!!!
メイたん、レドさんお借りしました!
メイ誕の筈がなぜかレドティナ!!すみません!!!!!



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