「うわぁー、さの、さのっ!見てよこの桜」

「ああ、見てるっての」


桜を目の前にして無邪気に笑うこいつは、この時期になるとはしゃぐ
桜を目にした時のこいつの表情は俺の心をも揺さぶる
俺にとっちゃ、桜も綺麗だが
こうして触れて、感じるこいつの綺麗さのほうが魅力的だ
なんつーと、こいつにたらしだなんだと言われかねないので言ってやらねぇけど…

こうして平穏な時を過ごすと、改めて巡る季節を2人で共に過ごせる幸せを噛み締める

そして、俺達が過ごしてきたあの激しい時間は、
この桜のように潔いものだったのだろうかとふと思う


「さ〜のっ!考え事?」

「ああ…俺達が京を日々駆け回ってたときのことをな」

「…大丈夫だよ。千鶴なら土方さんをどうにかできるし、新ぱっつあんも簡単に死ぬような人じゃないよ」


大丈夫。

コイツがそう強く、力強く口にする一言が
何故だか本当にそうなんじゃないかって思えるから不思議だ。
これが言霊ってやつなんだろうかとも思うが、それだけじゃないはずだ。
こいつ自身の思いの強さが俺自身に伝わってくる

大丈夫。

そう俺の手を、自分の一回り小さい掌で力強く握ってくるから、
そこに温かさを感じて、俺はこうして前を向ける


いつも驚かされてばっかだな、俺は


力強く微笑むから俺は前に進める
凛として真直ぐ前を見つめる瞳が俺に力を与える
そして、俺なんかより小さなこの手で、
俺を必死に守ろうと頑張るもんだから
俺は時折コイツがどうしようもなく愛おしくなっちまうんだ


気付いた時にはもう心を攫われてた
吃驚する暇も与えやしねぇ
繋ぎとめるだけで必死で、こいつが離れていかねぇように必死でだった

だがそんな俺も今はコイツとの時間を漸く安心して過ごすことができる


「桜、来年も見に来ような」

「来年だけじゃないよ、再来年もまた来年も…ふたりで見にこようね」

「ああ、約束な」


昔もコイツと約束をしていた
「死ぬな、生きて帰れ」と
それは俺の身勝手な約束に過ぎなかったが、
約束を本当にし、死なない為約束

でも今は違う
これからの約束はそんなものではなくて
未来に夢を見て、沢山の思い出を交わす為の約束

そしてその約束がいつか、巡り巡って真実となるその日まで


ただ2人でこの巡り往く季節を歩いていく


(さの、私は隣りに居るよ)
(ああ、俺が離しゃしねぇよ、ずっと隣りに居ろ)



びっくり、さらわれた



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