たとえば、自分の弱さを痛感したとき
なんともいえない感情に囚われる
皆の足手まといにしかならない自分が悔しくて、哀しくて、苦しい
挫けそうに何度もなって、そのたびに貴方の強さに助けられてきた


正直に言うと、私は置いていかれるのが怖い
どこかで私の手の届かない場所に皆が行ってしまうんじゃないかと不安になる
手を伸ばして、足を踏み出して、追いかけて、追いかけて…
横に在る、彼らの笑顔が次の瞬間には、
存在しなくなってしまうんじゃないかと怖くて堪らなくなる
置いてかないで、行かないで
そういえたらいいのに


いつでも先を往く彼らが眩しかった
そんな風に私もなれたらと何度思っただろう
強くなりたい、彼らみたいになりたい、置いていかれたくない
そんな思いだけがぽつんと胸に残る


「独りが…こんなにも怖いなんて、知らなかったな…」


人は大切なものができると、それを失う恐怖に囚われる
それは的を射てる
こんなに自分が弱い人間だったなんて思わなかった
独りではない、けれどどうしても孤独感に襲われるときがある


「…馬鹿娘、お前は独りじゃないだろ」


森の奥深くに居たはずなのに、聞きなれた声がした
彼の金髪は夜でもよく映えて、きらきらと太陽みたいで眩しかった
なんで?とか、どうして?とか、そんな言葉よりも先に
さっきの独り言を聞かれていたことに驚いた


「三蔵…」


「お前は独りじゃねぇだろうが」


「違うっ…確かに今は皆が居る、三蔵が居る」


けど、怖いんだ
歩みを止めたらもう追いつけない
皆がどこかに消えてしまうそんな想像が容易にできてしまって

そんな考えをすべて見透かしたように三蔵は語る


「置いてきゃしねぇよ」


「っ…」


「置いてくんならとっくにしてる。今までに一度でもお前を置いてくようなマネしたか?してねぇだろ?……だがな、俺たちがいくらそれを言ったって、お前の不安が消えるわけじゃねぇんだ。だったらその胸の痛み抱えて進むしかねぇだろ。生きてる限り、それは変わらねぇ。何かしら痛みや不安抱えて、それでも生きてくしかねぇんだ。置いてきゃしねぇ…けどな、その両足しっかり踏みしめて自分の足で前見て歩け。一緒に進むんだろ?」


三蔵の言葉はどうしてこうも胸に引っかかった痛みや不安を浄化してしまうんだろう
三蔵の不器用なりのあたたかさが私には心地がよくて、無性に涙が溢れた
前に進む三蔵たちが居た
それを追いかけてきた私が居た
決して三蔵たちは歩みを止めてはくれないけれど、それでも置いてかないでくれた
スピードを緩め、私のことを待っていてくれた
そんな簡単なことに気づかされて、いつも三蔵は手を差し伸べてくれる

私にとって彼は光そのもの
何度でも前に進む強さと優しさをくれる
だから私は歩みを止めずに居られた

考えれば考えるほど、嬉しい涙は流れ続け、
三蔵は小さくため息を吐きながら、優しい手つきで涙を拭ってくれる


三蔵、三蔵…

私は貴方が居るからがんばれる
何度も水底から引き上げてくれる貴方が居る


私なんかより、沢山の苦悩を知っている人
それでも貴方の強さは穢れなく、眩しくて、強い
そんな強さは私を焦らすと同時に、生きる希望になっていた
頑張っている貴方が居る
強く、強く、前へと進む姿は私を生かす
私も前に進まなくちゃ、生きなきゃと…
確かに、その光が眩しすぎて辛いときもあるけど、
そんなときは、また、
こうして私を引き上げる腕がある


だから生きられる


この胸にある苦しみと痛みと共に…



「…三蔵、ありがとう」


「なんのことだかな」


「ふふふ…ありがとう。だいすき」



私は今日を愛し、明日を愛す
そうして続く道を駆けて往く
前を往くこの人たちを追いかけて…




この胸の苦しみが愛おしいほどに生きて




(戻るぞ、あいつらも必死になってお前を探してんだよ)
(うん…)
(泣くな…お前の居場所はここに在る。それだけ覚えとけ)


《愛おしいほどに思う彼らの隣に私が在るその事実だけで、生きていける気がする》

(みんなだいすき)




――――――――――――
企画サイト様「」様に提出
KOKIAさんのこの胸の苦しみが愛おしいほどに生きてをイメージして…
うまく書けてるか分かりませんが、
いつも私に力をくれる、この曲がだいすきです




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