ちょっとしたことですぐ泣くし、ちょっとしたことで思いっきし怒り出す
それに、それに…
なんでもないことで喜ぶ

あいつの笑った顔も怒った顔も泣いた顔も、
全部全部は俺に関する出来事で作られていたって気づいたのはいつだったろう?

でもそんなことが俺の心を自身が思うよりも満たしていたことに気づいたのは、そう遅い段階じゃない


何故、俺のために泣くんでィ

何故、俺のために怒るんでィ

なんで、俺のことで笑えるんでィ


そんなあんただから俺は、どうしようもなく離れがたくなっちまうんでィ


「泣くなよ」

「ひくっ…う、うぅ」

「言ったそばから泣くんじゃねェよ」

「…な、泣いてないっ!泣かないって約束するから、だから総悟も絶対に死なないで」


泣いて願うこいつの顔は涙にまみれて、本当に不細工
けど、どうしてか可愛い
こんな姿はどうしようもなく無防備で、
俺たちが江戸へと向かった後でも、
こいつは俺の知らないところでどんどん綺麗になっていくのかと、
そんなことを急に現実味を帯びて感じ始める


「死なねェよ…俺が死ぬように見えるってのかィ?そんなに心配するのはやめなせィ…俺のほうが心配で置いときたくなくなるだろィ」


こいつの頭をくしゃりと弄くると、
目に涙を溜めながら、だがこいつの顔は女のソレで
つい、柄にもねェこと言っちまう俺が居る


「いつか、いつかまた…
俺は、成長してお前と一緒になれるような男になりまさァ
だから、あんたは他の男に誑かされたり、余所見なんかすんじゃねェぞ」


「ん…じゃあ、約束。私、総悟が私を迎えに来てくれるまで待ってるから。ずっと…」


「まァ精精俺に見合う女になってなせィよ?
俺は強くなりまさァ。
誰よりも強く、何者からもお前や姉上を守れるような男になりまさァ
だから、あんたも強くなりなせィ
今のように俺を待つ間、ピーピー泣いてるようじゃいけやせん。強い女になりなせィ。あんたは俺を笑顔で迎えてくれればいいんですからねィ」


自分でも分かるほど臭い台詞
俺はきっと強くなる
守りたいものがある

姉上、近藤さん、そしてこいつ

守りたいものを守れるだけの強さが欲しい
全部を守りきれるとは思わない
けれど、自分の守るべき、守りたいものの存在だけは守れるようになりたい
こいつの笑顔、こいつとの日常
それを守りたい

ふたりで笑い合う未来が永遠であるように、

俺は、ただ、守れるだけの強さが欲しい

だからこそ、俺は往く


そんな意味を含んだ言葉
それはしっかりこいつにも伝わったようで
こいつの頭に置く、俺の手にこいつ自身の手を絡ませて言う


「分かった。約束」


やはり、笑顔だった
この笑顔を守りたいと俺は思うんだ
どうしようもない衝動で、
俺より少しばかり小さい体をぎゅっと力を込めて抱きしめる
会えない日々が悲しくないかといえばそうではない

だが、いつかの夢を現実へとするために今は離れる


「元気でいて」

「それはこっちの台詞でさァ。自分を大事にしなせィ」

「それこそ私の台詞だよ。総悟はなかなか自分を大事にしないんだから」


「ん、分かりやしたよ………じゃあ…行ってきやす」


また会う日まで、


死ぬかも知れないこの身
だが、ひとつ言わなければいけないことがひとつ

進めていた歩みを止め、少し離れた場所から、踵を返し
こいつ、否、なまえと向き合う


「…俺は死にやせん。必ず帰ってきまさァ。
だけどちゃんと言葉にしてなかった言葉もある
そして言葉にしなきゃいけねェこともありやす
だから言いやす
俺はあんたを好いてまさァ
気づいたらもう好きになっちまってて、どうしようもねェ
あんたを守れるような男になりまさァ。だから、俺が帰ってきたら、

その時は…

俺の嫁さんになってくれやすかィ?」


「馬鹿っ…当たり前でしょっ!」


その言葉と共に見せる笑顔がいつも以上に眩しくて
あたたかくて、俺のほうが情けねェけど涙が出そうになった


「待ってなせィ。今以上にいい男になりやすよ」


最後にそっとなまえの額に口付けて、近藤さんたちの下へと急ぐ

正直、いつ死ぬかもしれぬ俺が思いを伝えていいなんて思っちゃいねェ
だからこそ、土方は思いを伝えねェっていう選択を選んだ

だが、俺はあいつを手放すなんてできねェ臆病者だ

あいつが俺以外と笑って過ごす世界なんて考えられねェ
あいつの隣に俺が居ない世界なんて考えられねェ

俺は縛る

あいつが俺から離れられねェように、縛る
必ず帰り、あいつとの未来を夢見て俺は駆けるのだ



(いってらっしゃい、御武運を…)
(帰ってきてやりまさァ)




未来の為に、俺は往く





――――――――――――
武州に残してきたヒロインと、武州を旅立つ沖田の話でした
でも、書いてて気づきましたが、
武州を出るときの沖田の年齢ってまだ小さかった気がして…
っで、こんな内容考えてたり、実際に言葉にしてたら、
一体どんなマセ餓鬼だよって突っ込みたくなる私
そこを少し反省
あともうひとつ補足をすると、
沖田は最初のほうで一緒になれるような男になるといいつつ
最後に嫁さんになってくれやすかィって聞いてたのは、
今までの一緒になる発言は全てヒロインの許可なく勝手に沖田が言ってたことなので、最後にけじめをつけて承諾を得る発言をしたわけです
でも、沖田的には答えがOKだって絶対分かって言ってる←

結果的に満足です^^*




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