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「うわぁ・・・!!」
翌日、朝練は休みのためいつもよりゆっくり学校に行くと校舎にデカデカと『祝!春の高校バレー全国大会出場 男子バレーボール部』の幕が!!うわぁぁ!!嬉しいなぁーー!
「おはよう〜!」
「おはよ。さち、優勝おめでと。」
「ユキちゃんありがと!ってでもそれは選手に言ってあげてー!」
「ふふ、そうだね。でもマネも大変だったでしょ。それに、朝から色んな人に話しかけられて大変だったんじゃない?」
「そーなの!嬉しいよねー皆応援してくれてたのかなぁ?」
「・・・まぁ、そうね・・・」
教室では真っ先にユキちゃんがお祝いしてくれて。良い子!!
今日は教室に着くまでにめっちゃ話しかけられた。知らない後輩にまでおめでとうございますとか言われて、ありがとうと選手に言ったげてーという会話を何度繰り返したことか。
どうやら昨日の試合の様子がテレビで放送されたようで。翔ちゃん映るだろうし!と録画しておいてまだ見てないのだ。どうやら見てくれた人が結構いるようで、マネも映ってたみたい。
「うぃーっす」
「スガ!澤村〜!」
おお、大地くんもスガちゃんも、教室では早速囲まれている。・・・女子に。
え、これはヤバい!!元々、スガちゃんも大地くんも人気だ。男友達が多いから今までこんな事あんまり無かったけど!普段話しかけ無いような子達まで話しかけてる・・・!!
そ、そうかバレーしてる姿は格好良いもんね!そりゃ気になるわ! って可愛い子が群がってるぅぅぅ!照れてる大地くん可愛いな!ハッそんな事言ってる場合じゃない!!
「あははっさちってわかりやす!顔に全部出てるよ」
「えっ嘘だ!」
「ほんとほんと。」
恥ずかしいー!
っていうか、私も恥ずかしいとか思ってる場合じゃ無いわ!予選終わるまでまっててとかエラそうな事言ったんだし、そうだよ、ちゃんと伝えなきゃ。
「根性!」
「おはよ。・・・どうした?」
「うぎゃっだっ大地くんおおおおはよう!」
「おう。あ、そうだ今日の部活いつもより1時間早く終わるって。で、部活の後ちょっと時間作れるか?行きたいとこあるからさ。」
「え、うんわかった!じゃ潔子ちゃんやっちゃん
に伝えとくね!」
「ん、宜しく。」
にこっと爽やかな笑みを返し自分の机へ戻る大地くん。
根性聞かれた!結構大きい声だったかも!ふぬぅ恥ずかしい!!
つい机に突っ伏して足をバタバタさせてしまった。くすくす笑ってるのはユキちゃんだ・・・うう。
にしても行きたいとこってどこだろう・・・っていうか2人でかな?あれ、早速チャンスじゃね?今日言おっかなぁ。うん、そーだよもう今日でいいよね。
え、なんでこんな落ち着いてんだろ。自分がわからん・・・。でもずーーっと引っかかってて、気になる事もあるんだよねー。それ先に聞いてから、かなぁ。って2人じゃなかったら意味無いけどね!!いいさ!とにかく勝負は放課後だ!
って決めたら時間が過ぎるのが早い!あっという間に放課後だ。
部活終わり、着替えて更衣室を出ると、大地くんが1人で待ってくれてた。
「ごめんねお待たせ!」
「おー、お疲れ。じゃ、いくか。」
「うん、ってどこ行くの?」
「着いたらわかるよ。」
え、えーっと、そのふわっと笑顔やめてくれませんかね?!心臓に悪い!!!
っていうか今日の大地くんはちょっと変なんだよなー。なんかふわふわしてるっていうか・・・。
と、そんな事を考えながら大地くんに着いて行くと、辿り着いのは、いつかの公園だった。
「ここ、前に来た公園?」
あの時は夏だったけど、今は10月の末。日が落ちるのも早くなり薄暗く、肌寒い。
大地くんは、私にベンチに座らせると、ちょっとまってて、と言って近くの自動販売機でココアを買って来て渡してくれた。
「わー暖かい・・・。いいの?」
「いいよ、今日来てくれたお礼。」
「へへっありがとう!」
ベンチで横並びに座って、暖かいココアを飲む。
缶のココアは甘ったる過ぎるのに、冬に外で飲むと何で美味しいんだろう・・・謎だわ・・・ってそんな事考えてぼんやりしてる場合じゃ無いわ!!つーか今日公園来たかったの?!何で?!チラッと横目で大地くんを見るも、大地くんも、もはや高校生らしからぬ顔でコーヒーを飲んでいる。
これ、側から見たら縁側でまったりしてるおじいさんおばあさん状態なんじゃ・・・?!
「あの、大地くん?公園来たかったの?」
「ん?そうそう。もうちょっと待って」
「・・・わかった。」
ぼんやりして、1、2分過ぎた頃だろうか。
「さち、そろそろだ。」
「えっそろそろって、何・・・!!!」
その時だった。公園の木という木が、キラキラと光り出したのだ。色とりどりの光の渦の中。
「・・・う、わぁ・・・」
イルミネーションだ。
遊具には光の動物達が描かれている。それらもキラキラと輝き、光の動物園のようだった。
「・・・ココ、昔からこの季節になったらすげー綺麗なんだ。・・・さちに見せてやりたいなってずっと思ってて。」
「綺麗・・・凄く、綺麗。わぁぁ・・・」
私の語呂力が乏しいせいで、こんな感想しか言えないけど、とにかく、すごく綺麗なんだ。
しかも、それを見せたいって思ってくれるなんて・・・あぁ、もう、なんて人だ。
「今日、誘ってくれて本当にありがとう」
大地くんに言う。多分私の顔はへにゃへにゃになってるんだろうなぁ。
「・・・
好きだ。」
「・・・へ?」
「俺、さちの事が好きだ。」
キラキラ輝く光の中で、いつもの優しい瞳でそう言ってくれた大地くん。
一瞬何を言われたのかわからなかった。だけど、真っ直ぐ見つめてくる大地くんの瞳が、暖かくて・・・自覚した途端に心臓が煩くなる。顔が熱い。
「俺と、付き合ってくれませんか?」
だけど、ずっと気になってた事もあって
「っあの、あのね、ずっと聴きたかった事があって、・・・」
「うん」
「・・・修学旅行の、USJでね、えっと、大地くんと、み、道宮さんが、・・・っ手を、繋いでて、」
「え?!」
「あと、お土産屋さんで、あ、偶然私が近くにいるときに、大地くんが、私の事、道宮さんと話を、その、しててね、妹がどうのって言ってたの聞いちゃって・・・」
「妹・・・?」
「大地くん、私の事は妹みたいにしか思って無いのかな、って、ずっと気になってて・・・」
「妹・・・妹・・・?あ、いや待て。つーか手握って無ぇけど、っていうか、あー・・・」
ちらりと視線をやると、片手で口元を隠すように抑えている。しかも、
「な、何で笑ってんの!!」
「いや悪い、あっ笑ってたんじゃなくてな、嬉しくてだな、」
「何が!?」
「いや、ずっと気にしてたって、それって・・・」
「!!!」
ぎゃあぁぁぁぁやっちまったァァァァァァ!!
その時から気にしてたとかさぁ!その時から好きだったって言ってるようなものでは?!
うわぁぁあもうやだ!!あーもー!
「っそうだよだってずっと気になってたんだよ悪い?!私は自分に自信無いし!絶対好かれるはず無いって思ってたし、好きになっちゃいけないって思ってたし!!」
「・・・」
「っ絶対、邪魔しちゃいけないって思ってたし・・・」
あーもう、何言ってんだろ私・・・!
「っごめん、でもね、ずっと気になってて、モヤモヤしてて・・・」
「・・・ごめんな。でも、俺もあんまり覚えて無ぇけど、俺は道宮と手を繋いだ覚えは無いし、さちの事を妹みたいに思った事なんか、一度も無いよ。」
・・・あぁ、よかった・・・。
心の中で、ほんの一部ずっと凍っていた何かが、するすると溶けていく感覚がして。今度は溶けたものがゆっくり暖かくなっていく。
「・・・そっ、か・・・良かった・・・」
それは小さな声だったけれど、大地くんには聞こえたようだ。
「・・・いや。あっ、あー・・・
・・・ところで返事は?」
「っあ、えっと、その、嬉しい・・・デス。」
「・・・おー・・・それから?」
えぇぇぇぇぇ!!
お、落ち着いてた数時間前の私行方不明!
めちゃくちゃ緊張する・・・!
大きく深呼吸する。
目を瞑り、覚悟を決めて目を開けると目の前に大地くんだ。
え、いつのまに正面に?!恥ずかしい!・・・けど
あ私の好きな、優しい目だ。
「・・・好き、だよ。
へへ、あのね、ずっと前から、好きで、っ!!」
言い終わらないうちに立ち上がった大地くんに、
ぐいっと手を引かれる。勢いのまま立ち上がって、前のめりになる体を、ぎゅーっと抱きしめられる。
「あー・・・
やっと、俺のになった・・・」
その言葉を聞いた途端、溢れてくる涙。
ねぇ、これは夢じゃないよね?
私が、あなたを好きでいいんですか
となりに並んでいいんですか
この、手を、・・・貴方の背中に、回していいんですか・・・?
「っ・・・大地くん」
「んー・・・?」
「大地くん、っうぅ大地くん」
「ははっまた泣いてる?」
「っ・・・!!」
ゆっくりと手を、彼の背中に回して、力を入れて抱きしめ返すと、もっと強く抱きしめ返される。
胸がいっぱいになって、涙と共に想いが溢れてくる。
「っ・・・生まれる前から、大好きだよ」
end
むぎゅー
(何なんだよコイツ可愛過ぎだろ!!)
(むぎゃっちょっと痛い・・・でも幸せだなぁ)
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