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春高決勝戦、1セット目が始まった。
今日はベンチです。ツッキーの怪我があるからだ。それについて用意しているものがあるので、今日はベンチにいさせて頂きます。
・・・それにしても選手紹介で呼ばれて躓いたり反対側に礼し忘れて慌てる翔ちゃんは可愛かった。ちゃっかりビデオ録画もしております!

澤村サーブからスタート・・・アウト、・・・お見合い・・・。うん、そりゃのまれるわ。この雰囲気というか空気は初めてだし・・・。




「おちつけええええ!

自滅する余裕無えぞオアア!何にヒビってやがるテレビか!!浮かれてんじゃねえええ!!」


スガちゃーーん!顔!!顔ヤバい!言い終わった後の顔も面白い・・・3年間で一度も見た事無い顔だ。いやでも、確実に皆には届いてる!なんか顔付き変わった!!スガちゃんは戻ってきてー!!



・・・落ち着いたものの、やっぱり序盤は牛島くんに打たれ放題だ。それでもツッキーは、ブロックを飛ぶ度に少しずつ修正している。


ふと不安になる。勝てるんだろうか、と。
リアル牛島くんは想像以上だ。高校生レベルじゃない。信じるしか無い。私が弱気になるな、疑問を持つな。

誰より知ってるんだから、信じよう。



16-8、TTO。
ドリンク配りタオル配りを2年に任せてツッキーのとこへ。

「「ツッキー突き指!?大丈夫?!」」
「「あ」」
「ちょっとリズミカルに言うのやめ・・・・・」

「あはは!ぐっちと被ったねぇ!」
「デジャヴ・・・!」
「・・・・・・」

わー・・・お前ワザとだろみたいな目で見られてるぅ!気にしない!
「ホラ指出して」
「ハァ・・・。スミマセン」

ほいほいとテーピングしていく。ツッキーは、山口と話し中だ。うん、これは大した事無いな。

「はいおわり!」
「スミマセン」

無言で指を動かすツッキー。テーピングの感触を確かめている・・・?いや、何か違う・・・?

「ーー・・・チッ」


「「!!」」

ピーーッとTTO終了の笛が鳴る。

パッと山口と目を合わせて、お互い言いたい事が分かった。コクコクと2人で頷き合う。


舌打ちした・・・!ツッキーが!!
あのツッキーが悔しがった・・・!うわぁぁやばいやばいゾクってした!!鳥肌!悔しがったんだあのツッキーが!あのツッキーがぁ!!
とか考えてたら牛島くんサーブで始まり。
ドォッと音がしたと思ったら大地くんの手を弾きサービスエースとなる。ヒィィ!いやあれ高校生レベルじゃない。凄い回転。大地くんが取れないしあんな所に飛んで行くか?!これ横からだとわかりにくいけど、微妙にスライドしているんだろう。
それでも大地くんがレシーブ出来ないってそれ程強い・・・いや、違う『左』というものがそれ程厄介だという事だ。でも、慣れるしか無い。何とか切るしか無い。

ピリリとした空気。
視線を向ける・・・ノヤっさんだ。凄い集中力だ・・・。
次の瞬間、再びドォッとサーブがきたと思ったら我らがノヤっさんが!!
「あがった!」
すげぇぇ!!とか感動したてら影山がツーを打つと思いきやスパイクモーションからトスを上げ、田中が打つ!
ええええすげぇぇぇ!!影山が打つと思ったし!騙されたー!そんで田中も良く入って来てたなぁ!!こういうところが田中なんだよねぇぇ!!いやちょっと意味わかんないけど!すいません!!

でもその後、巻き返しとはいかず、結局1セット目は16-25で負けてしまった。
牛島くんだけで11点も取られている。これが原作通りなのか・・・わからない。2セット目は取れたはずだけど、細かい数字を覚えて無いんだ。20年以上前の話だししょうがないけど、不安だなぁ。


・・・大丈夫だよね、うん、大丈夫、信じよう。




「ーー牛島も人間だ。必ずスタミナの限界がある。直接点になっていない攻撃も、必ず後々効いてくる 忘れんな。」
「すみません。いいですか」
「あぁ」
「5番のブロック気を付けて。ゲスブロック。読みと直感が凄いからね。攻撃あるのみ!!頑張れ!!」

あぁ〜もーこんな事しか言えないとかほんと情け無いなぁ!!無力!!





そして、2セット目が始まる。
最初からのっていきたいが、そう上手くいかない。天童くんのブロックだ。3連続シャットされて1回目TO。

「ゲス・・・」
「・・・翔ちゃん、目潰しされたりはしないからね。」
「!!」

なんでわかった!みたいな目をされた。くそうこのおバカさん可愛いなー。って和んでる場合では無い事は分かってるんだけどね。

さてTO開け、白鳥沢と一進一退。いや一進一退って凄いよね!!烏野が徐々に離されず、食らいついて行っているんだ。ツッキーが、ブロックのタイミングを掴んでいる。何度も何度もワンタッチと叫ぶ。
トータルディフェンスが初めて綺麗に決まり、ノヤが完璧なレシーブを決めて・・・




「ぅおああアアアアア!!!!」



でもやっぱりラストボール。

ツッキーが、ツッキーが牛島くんのスパイクをシャットしたのだ。



『バレーにハマる瞬間』



あぁ、これが・・・。月島蛍という人が、バレーにハマった瞬間を見た。
そういえば、こうして誰かがハマる瞬間をこの目で見るのは初めてだ。


「・・・凄い。この時を待ってたんだ・・・」
「?日向さん、どういう・・・?」
「最後のトス、ちょっと乱れました。乱れさせる時を待ってた。ずっとプレッシャーを与え続けたんです。」
「えっ」
「トータルディフェンスが機能して、あれだけしつこくワンタッチされれば、セッターである白布くん・・・10番にとって相当ストレスになったでしょうね。振り切りたいのに出来ない。そこで綻びが起きる。そういえばコーチも元々セッターでしたっけ?」
「おぅ。アレは相当苛立つだろうな。ただ、目的はあくまで牛島の攻撃力を削ぐ事だ。



だが、月島だけはそこで満足するつもりなんか最初っから無かったって事だよ。」


うわぁぁぁ鳥肌っ・・・!!あぁツッキーにナデナデしたいけど絶対殺される!し高すぎて無理だぁぁちくしょう!!





2セット目は31-29で烏野が取る事が出来た。
だけど、3セット目は白布くんが復活。結局20-25で白鳥沢が勝つ。


これで1-2。再び後が無くなった。



次のセット、落とす事が出来ない。
コーチからレシーブ位置を一歩下がるという事、ブロックは揃える事など説明がある。と、急にガバァっと立ち上がり縁下に向かって何か言いたげな顔をする翔陽。

「何怖いんだけど!?」
「・・・・・・!!」
「ちょ、っさちさん翻訳お願いします」
「えぇっ」
「・・・!!!」

そう来たか!
チラッと翔陽の顔を見て・・・

「あ、なんか思い出した?んで・・・何か思い付いた?」
「(コクコクコク)」
「えぇ・・・」
「縁下が和久南戦でなんか言った事に関係してるんじゃない?私後半ちゃんと見れて無いからわかんないけど」
「えっ何する気・・・?!」
「大丈夫大丈夫!何とかなる!」
「え、えぇぇ!俺責任取れませんけど?!」
「気にしなくていいよ!この子達のトンデモ攻撃は結構相手に効くし!ね!」
「は、はい・・・」

「翔ちゃん、思いっきりやっておいで!このセット取ったら、5セット目があるよ!まだ、バレー出来るよ!」
「うん!!」


変わらない、太陽のような笑顔だ。


さぁ、行ってらっしゃい!!


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