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ガァンッ!バキッ!!

「俺が繋いだボールを!!あんたが勝手に諦めんなよ!!」

あー・・・やっぱり起こるべき事象は、起こるんだなぁと痛感してしまう。
私がいてもいなくても。



烏野対伊達工。
原作の通り、東峰が徹底的にマークされ、敗退してしまった。
私が出来る事は何も無いのだ。
だってトスを集め過ぎているとか、ブロックフォローを、とか、ブロックアウトを狙ったほうが、、とか。そんな事、皆分かってるんだ。
分かっててもやっぱりエースに託される場面はある。どうにも出来なかった。

原作の勝敗の点数やセット数など、細かいところは覚えていない。
結局負けて、結局起こってしまったのだ。

でもさ。あんな顔した皆を見たのは初めてだった。胸が痛かった。






そして次の日の放課後、練習前に澤村から部員へ通達があった。

西谷が一週間の停学と、一ヶ月部活禁止になったこと。
そして、東峰は今日も来ない。


あぁあ皆の顔が曇っている。
烏野排球部の部員は、そんな顔でいて欲しく無い。


「・・・ちょっといいですか。」

「・・・どうした?」


「私が知ってる西谷は、本気でバレー馬鹿だと思います。それは一緒にプレイしている皆の方がわかってるよね?」
「・・・」
「そんな奴が、一ヶ月部活禁止って言われて、家でのんびりしてると思う?!」

「「「!!!」」」

うん、ハッとしてくれた。
まぁこれは事実を先に伝えてるだけだけど。

「ノヤはリベロでしょ。私もそうだったからわかるけど、レシーブ練習はどこでもできる。しかもノヤはブロックフォロー出来なかったって悔しがってた。あの負けず嫌いで馬鹿みたいに前向きな奴は絶対!どっかで練習して克服してくるよ。」

想像してよ、ノヤが立ち止まる?

「さちさん・・・!!そうっすよね、ノヤっさんは漢だ!のんびりするはずねえ!」

そうだそうだ!

「それと、東峰に関してはさ、あれは馬鹿みたいに後ろ向きでへなちょこでしょ?」


「でしょ?!」

「ま、まぁ・・・」
「アイツは今、ノヤに酷い事言ってしまったー。何であんな事言っちゃったんだ俺の馬鹿ー!何がエースだ、自分にはそんな資格がない、なんで俺はこんなに弱いんだーとか、皆に悪いとか思ってぐじぐじしてるんだよ。想像がつく!多分、部屋にキノコ生えてる!」
「ブフッ」
「こらスガ・・・」「悪ぃ」


「つまり!アイツは自分に対して憤りを感じて、無駄に色んな事考えてるだけで、バレーが嫌いになった訳じゃないんだよ!」


「「「!!」」」



「結局東峰もバレー馬鹿なのは一緒だから、絶対戻ってくる。」

「なら、私達が今やることは、アイツらが帰ってきた時に、俺たちこんな事も出来るようになったんだぜ!だから、お前に負担ばっかりかけないから、安心してプレイしろよ!って言ってあげる事だと思う。」

「皆、少なからず俺のせいだって思ってしまってると思うけど、なら後悔しないよう練習しよう。逃げた東峰は現在アホだけど、これを越えて戻ってきた時はきっと凄いエースになってくれる・・・。」

「ね、潔子ちゃんもそう思うよね?」
「うん。」

ほらほらー!って田中、目が輝きすぎだ!



「・・・うん、そうだな。俺も信じる事にした。」

「キャプテン・・・」
「大地さん・・・」

「・・・耳が痛い話かもしれないけど、縁下、木下、成田が練習来なくなった時も、さちは何もしなかっただろ?廊下とかで会っても普通に挨拶だけだったり。」

コクリと頷く。

「それはさ、お前らのこと、必ず戻って来るって信じてたからだ。」

3人とも目を見開いて驚いている。


えぇえー!ここでその話が出るとは!!
大地くんはそのまま続ける。



「俺は何度か話に行ったりして、ま、情けない話だけど、焦ったよ。でも、こいつはずっと信じてた。旭には勿論主将としては話に行くし、西谷には説教もするけどな。今回は俺もあんまり言わないつもりだ。信じようと思う。」


「だからお前らも信じてやってくれ。で、今、俺達に出来る事をしよう!さぁ練習開始だ!」

「「「あス!!!」」」




私は知っているからこそ、2人が帰って来た時、皆に、『信じてたらその通りだった、信じて良かった』って思って欲しかった。それに、同じ思いの人がいると、『信じる』を継続しやすいだろうしね。

あぁ、だけどまさか澤村がそんな風に言って、思ってくれたのが、嬉しい。知ってるから言っただけだ。だけど、前へ向くきっかけになってくれたなら・・・それが、どれだけ嬉しいか。


「・・・大地くん、ありがと。」
「なんでお前がお礼を言うんだよ。俺の方こそありがとうな。」




「さちが居てくれて良かった。」




私は、幸せだ。


「へへっ!じゃー仕事行ってきます!」



澤村の笑顔は心臓に悪い・・・!
なんかもうさぁ!なんなのあの優しいっていうか嬉しそうって目は!勘弁してほしいわ!!





「ひなちゃん」
「あースガちゃん!!スガちゃんも、自分のこと責め過ぎたら駄目だよ!・・・東峰がキノコの収穫終わって帰って来るの、待ってようね!」

「ふ、はははっ!・・・うん、・・・ありがとう。俺も、頑張る」
「うん、頑張ろうね!」

優しいひと。スガちゃんの笑顔のパワーは皆のパワーなんだよ。必ず戻ってくるからね。大丈夫だから、どうか、信じてね。











練習後

「「さちさん手伝います!」」
「おぉ木下、成田もありがとうー!」
「おっ俺も!あと、ありがとうございます!」
「縁ちゃんどーしたの?あっ縁ちゃんっていい呼び名かも。そうしよう。」
「いえ、その、信じてたっていうの、嬉しかったんで・・・」
「あぁ気にしなさんな!あっそれよりウチの世界一可愛い弟が烏野合格したんだー!バレー部入るから宜しくね!」
「え、弟いたんスか!(世界一?)」
「へー。そういえばお姉さんっぽいですよね。」
「え!本当?!そう思う?!」
「はっ、はい・・・?」
「え、お、お姉ちゃんって呼んでもいいよ・・・!!(縁下からお姉ちゃんって呼ばれたい・・・!!!)」
「え?!」
(顔赤くなった!縁下くっそ可愛いな!!)

「ひなちゃん落ち着いて!鼻息荒いし目がキラキラすぎて縁下ひいてるから!」
「・・・うわー・・・本当さちさんって残念女子っスね!」


「大地くーん田中が悪口言ってるー!」
「ちょ!何で俺だけ!!ギャアアア!!!」










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