「よおーっすリク」
「また来たのか」

彼は毎日、惜し気もなく俺の家にやってくる。俺を絶対に自分の家には上げないくせに、俺の家にはずかずかと上がってきてはそこらへんのものを散らかしたり、時折甘い言葉を囁いては半ば無理矢理に組み敷く。別に嫌な訳ではないけれど、これではフェアじゃない。貸し借りは貸しっぱなしでもダメなんだ。

「星、」
「あん?」
「今日晩お前の家に行ってもいいか」
「…!」

星は大層驚いた顔をして煙草を吸う手を止めた。そしてソワソワしながら唇を尖らせ、そっぽを向き、また煙草を吸いはじめた。

「なっ、なんでスルーだよ!」
「うっせー。何だよ、早くしてほしいの?」
「ち、違う!」

ゆっくりと体を寄せてくる星を力一杯に押し、少し大きめの声で叫んでみた。奴はまた動きを止め、元の位置に座りなおす。

「おかしいだろ?何でお前の家に上げてくれないんだよ、」
「…」
「俺たち、付き合ってんだろ…」
「そうだけど、さ」
「…いいわけは聞かないからな、」
「なんか…照れるんだよ」
「はぁ、?」
「いやその、なんだ、俺、今まで好きになった奴とか家に上げたことねーからさ、その、」

やめろ、そんなに照れるな。さっきまでの怒りとか憤りとか、こいつは軽々と溶かして、どこかにやってしまう。いつもそうだ。ああくそ、こいつは本当にずるい!






100820
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