フラフラと歌舞伎町を徘徊する奴はまるで捨てられた猫の様だ。そんなあいつを捕まえたいと、傍に置いておきたいと、思いだしたのはつい最近のことで、決してすきとか、愛とか、そういった感情な訳ではない。

「ひーじかーたくーん」

また来た。いつもこうだ。どこから入ってくるのか、フラリと俺の部屋に入ってきてはごろりとさも自分の部屋かのように寛ぐ。でも俺はそれを注意したり戒めたりしない。

「手ぶらか」
「え、何か欲しかった?」
「別に」

どうせ買ってこなかったろ?と聞くと、当たり前だろ、と奴は間抜けに笑った。その締まりの無い笑みをみていると、言葉では言い表わせない何とも言えない気持ちになってしまった。




    




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