凛月くんはあれから暫くよしよし、と頭を撫でてくれていたが私が もう大丈夫、と伝えると安心したように頬杖をついた。

「名前は良く泣くねぇ、」

「いや、これは長年に渡り蓄積されたものが溢れたというか…。」

「ふぅん?」

どこか嬉しそうに唇の端を上げる凛月くん。私は視界から凛月くんを外すと机に突っ伏した。散々Trickstarには嫌な態度を取っちゃったなあ、と自己嫌悪の波に飲まれた。みんなはちゃんと私の事考えてくれてたのになあ。もう少しみんなの事を見てればまた違ったのかな、とあれこれ考えてもあとの祭りだ。

「スッキリした?」

凛月くんの言葉に顔を上げる。

「名前、Trickstarの手伝い始めてから卒業するまでずーっと変な顔だった。久々に見つけたら更に死んだような顔はしてるわ、俺達に会う度に緊張してるわで、なんだか生きづらそうだった。今はいい顔してるね。やっと息を吸えたような顔してる。」

「………そんなわかりやすかった…?真緒くんに変な顔、バレてたかなあ。てゆうか、息を吸えたような顔って何。私、魚じゃないんだけど…!」

大失態だ…!と頭を抱えると ふふふ、とご機嫌な声が聞こえる。頭を再度撫でくりまわされた。

「大丈夫だと思うよ。多分、気がついてなかったはず。名前に久々にあった奴らはみ〜んな元気そうだね、なぁんて言ってたし?俺しか気が付かなかったんだよ、名前。」

どうだ、と言わんばかりの凛月くんの顔はこれ以上ないぐらいになんだか腹立たしかった。確かに私の気持ちはスッキリした。正直もやもやと私に巻きついてた嫌な感情全部がクリアになった感じもある。しかしそんなに私はわかりやすい人間だったかと机に顎を乗せて拗ねるとす、と近寄る影。

「………ちかい」

凛月くんが真隣に座り直すと体を寄せてきたのだ。文句をいうとゆっくり心地いい重みが私に加わる。少しだけほんの少しだけだけど幸せな気持ちになった気がした。

「いいでしょう?俺もスッキリしちゃったんだもん。名前は俺たちの事が嫌いになっちゃったんじゃない、お子様みたいに拗ねて家出しちゃってただけなんだね。ふふふ、かぁわいい。」

凛月くんののんびりした気だるそうな声の中に混じる楽しそうな色に私も思わず笑い声をあげた。

「ほんと恥ずかしいからそういういじりはやめてよね。」

2人で一頻り笑ったあとふと、凛月くんに名前を呼ばれる。何だろうと顔をそちらに向けると思ったよりも近い距離に驚いて一瞬怯む。じ、と視線が噛み合えばゆっくりと近づく凛月くんの顔に私はドキドキしてしまう。逃げないようにだろうかいつの間にか優しく掴まれている手首。キスをされる、そうわかっても何故か逃げない私がいた。
凛月くんが私の様子に満足そうに笑う。

「すきだよ、名前。」

唇がぶつかって、ああ、やってしまった。と私は意識の隅で思った。2度目の凛月くんのキスは紅茶の味がした。