撮影中にマネージャーが血相変えてやってきた時は何かしたかな、と首を傾げたほどだった。最近はどこか道端で寝ることもないし、と内容を聞いて驚いた。知らないところで俺の熱愛報道が出たらしい。名前かな?と少しだけ気持ちが浮つく。そしたら否定なんてしないで曖昧にして名前も否定しづらい空気にしちゃえ。

「ほら、今一緒のドラマの!」

「え、」

名前じゃなくて共演中の女優。うーん、なんでだろう?おかしいなあと更に疑問は深まる。二人きりになったこともないし、なんでもないはずなんだけど…。そしてどうやら向こうの事務所は否定をしなかったらしい。めんどくさい事になりそうだ。

「知らなーい。俺、その子と何もないよ。向こうもちゃんと否定してくれればいーのに。困っちゃうよね。」

「ちょっと、クマくん。名前に連絡入れといた方が良いんじゃない?そっちも面倒になりそう。」

セっちゃんに言われて、あー、と声を漏らすとま〜くんに連絡する。長く話してる暇は無さそうだからま〜くんの方から名前に事実無根だと伝えておいてもらおう。マネージャーと事務所に戻る途中でま〜くんから連絡がくる。

「なんか多分報道を信じててさ、お幸せにとかいってたけど…」

「はあ〜?」

本当に名前って女の子は何なんだろうか。自分のどこが好きなのとか突拍子もない事聞いてきたり、あんなに迫ってものらりくらりとまるでクラゲだ。あーもう、スマホ折りそう。しかもお幸せに?本当に馬鹿だなあ。
事務所に戻ってからは結構大変で、コメントを出すのが遅れたからか電話がめちゃくちゃ鳴っていた。俺の恋愛の話でこんなに騒ぎになるなんて、世間は大概暇なんだなあ。

「凄いね。」

「それだけ知名度が高いってことだよ、凛月。」

「ふぅん。じゃあ道端で寝ないようにしないとね。」

「お前まだそんなことやってたのか…」

冗談だよ、と返すとマネージャーと否定文を考える。どうやら相手方がそっちの関係者に事実関係を聞かれた時にはぐらかしたらしい。マネージャーが"もしかして凛月の事好きなんじゃない?"とかなんとか言ってたけどそんな素振りは見てない……と思う。ああ、めんどくさい。もうほっとけばいいんじゃないの?なんて言うと叩かれる。

「( 名前は俺のニュースみて少しでも悲しくなってくれたのかな。)」

全部の処理が終わった時には俺はどっと疲れていて、スグにでも名前に会いたいという気分になっていた。あっちは何だか俺を避けてるみたいだし、ここ数週間あってない。
信じられない拡散スピードで回っていく報道に大きくため息をついた。