真緒くんからのお知らせは頭が痛くなるものだった。どうやら真緒くんの熱愛が出てしまったらしい。そう、相手は私だ。Trickstarは今まで浮いた話が無かった。大方とくダネだ!と、飛びついた記者が事実確認せずに早まったのであろう。

「ああもう面倒だなあ。」

真緒くんサイドで火消しは行ってくれるみたいだが丁度明日発売の週刊誌には記事が出るらしい。佐々井さんからも1度連絡があったみたいで、恐らくこの事だろう。衣更真緒熱愛スクープ!お相手はアイドルプロデューサー!?だなんて馬鹿みたいな文字の羅列に目眩を覚える。私も仕事がしにくくなるからこういった誤解や噂は冗談でも困ってしまう。
真緒くんとの電話を終えるともう寝ようと支度を始める。明日になったら全部終わってないかなあ。
モヤモヤしながら横になるとチャイムが鳴った。こんな時間に誰だ、と恐る恐る外を覗くと凛月くんだった。なにもこんな時に来なくても良いのに、と苛立ちを覚える。真緒くんが全部処理してくれるって言ってたから大丈夫かと思うがこれで三角関係だなんて追加報道が出たら笑えない。

「どうしたの、凛月くん。」

外で放って置くわけにも行かずにドアを開けた。

「……ま〜くんと付き合ってるって本当?」

「……それ本気で聞いてないよね?」

全くもって呆れる。凛月くんも凛月くんだ。どこで聞いたか知らないけど、まず真緒くんにでも私にでも連絡して確認すればいいのになんでわざわざ来ちゃうのかなあ!

「真緒くんとはご飯行っただけだし、氷鷹くんも居た。2人きりなんかじゃないし腕引いてただけで熱愛だなんてほんと馬鹿みたいな記事、凛月くんが真に受けないでよ。」

「……そっか、」

良かった、と項垂れた凛月くん。私は腕を組むとイライラと人差し指で自分の腕を叩いた。

「大体、今更私たちが付き合ったりとか何したりとか絶対に無いでしょう。ありえない事だし、凛月くんから真緒くん取らないから安心して。」

「……ありえない…?」

困惑した顔をした凛月くんに私は頷いた。

「そう。だって凛月くんだって想像できないでしょ?私と付き合うだなんて。私は出来ない。」

「またそうやって勝手を言うんだ。」

怒ったような声に今度は私が戸惑った。勝手なこととは何だ。ふと佐々井さんに言われた言葉を思い出す。私と凛月くんは同じじゃない可能性がある、ということだろうか。いや、そんなまさか。

「俺が名前の事好きだって言ったらどうするの。」

凛月くんの言葉はやけに重たかった。