話の続きをしてもいい?と聞いたのは先輩で私は頷いたのに一向に話が始まらず私は内心首を傾けていた。自身の足の間に収めた私の両手をとって遊んでいる先輩に痺れを切らした私は声をかけてみる作戦にでた。
「先輩、」
「えっ!」
驚いた先輩が大袈裟な程リアクションを取るので眉を顰める。そんな驚かなくても。
「ええと、仲直りも出来たようなので私はそろそろ戻りたいなあ、と思ってまして。」
「え、この雰囲気で戻ろうとしてるの?」
と言われましても、と困った私を見た先輩が1拍置いて笑い始めた。
「名前ちゃんは本当にさあ…。なんかもう、分かるでしょ?俺の言いたい事。」
ね、と唇に先輩の手が触れた。思い当たることは少しだけ有るが確証が持てないので誤魔化したい。….が、先輩の雰囲気がそれを許してくれなさそうである。小さくため息を着くと
「先輩が、ちゃんと言ってくれないと分かりません。」
と言ってやることにした。背後は見えないがきっと少しだけ悔しそうにしてるであろう先輩に私は満足した。
「はは、そっか。……ちゃんと言ってもいいの?」
「ちゃんと言ってください。」
言葉は強気だが内心は心臓がばくばくしてしまっている私はぎゅっとスカートを握って平静を保つ、フリをする。
「好きだよ、名前ちゃん。」
先輩の言葉に私の胸はきゅうとしまる。どこかで予想していた言葉なのに実際に聞いてしまうと驚くぐらい私の心を乱すんだから羽風先輩はすごいなあ。
「……名前ちゃんは?俺の事、嫌い?」
「先輩は本当に狡いですね。」
「そうかなあ。」
肩越しに様子を伺えば見たことないような顔をした羽風先輩に思わず目を丸くしてしまう。小さく笑えばそれを目ざとく発見した先輩が唇を尖らせた。
「ええ、何その反応。傷つくなあ…!」
「ごめんなさい先輩。面白くて。」
更に拗ねた先輩が私の背中にグリグリと頭を押し付けるもんだから私はきゅんと胸を高鳴らせた。そんな私は恐らく先輩の事が好きなのだろう。
しかしアイドルとプロデューサー。どうなんだろう。
「先輩。」
「……なに」
「返事はあともう少し、待ってもらえませんか?私が先輩の隣に立てるぐらい実力を付けて誰も文句を言えなくなった時に先輩を迎えに行きます。」
「………真面目だね。」
面白そうに笑う先輩に私は安堵した。まあ、この1年で先輩が違う人を好きになる可能性だってあるわけだがそれでも今の私のまま先輩の好きに乗っかるのは自分の中で許せなかった。
「分かった。待ってるよ、名前ちゃん。」
そうやって笑う先輩の顔は今まで見たこと無いぐらい嬉しそうで私もつられそうになったのは絶対内緒なの。